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         第331回 
          友里征耶のタブーに挑戦 その1 
          冷凍マグロはどこへ行った 
        最近は鮨ブームだそうです。 
          特に30代の若い主人の店が目立ってきました。 
          私は「鮨ボーイズ」と呼んでいますが、 
          彼らの特徴は修行歴の短さと、お互いの情報交換による 
          ネタごとの新たな生産地の開拓です。 
          なかには鮨屋での修行歴ゼロを 
          ウリにしている主人もいるくらいです。 
        「次郎」のように、ヒラメは青森で東京へ入る鯛より上だ、と 
          頑なに主張を曲げない頑固なオヤジと違って、 
          ハマグリや穴子、コハダといった 
          江戸前の代表選手のようなネタを 
          鹿島や九州、能登にまで産地を広げているようです。 
          勿論流通システムの発達によって、 
          昔と違うレベルの鯛も使用しています。 
        このような数ある若手有名店、 
          そして銀座や赤坂、六本木といった繁華街の老舗店、 
          そしてホテルや再開発ビルに入店している高額店、 
          と請求額が街場の出前主体の店とは異なったコンセプトの鮨店は 
          かなりの数になってきています。 
        鮨ネタで値の一番張るであろう鮪ですが、 
          客にどうどうと「うちは冷凍を使っています」という店に 
          出くわしたことがありません。 
          最近の料理店のお約束といいましょうか、 
          食材の生産地を明言するのが流行ですが、 
          鮪に関しても「大間です」、「噴火湾ものです」 
          「佐渡です」と近海物=生=高額=うまい、といった 
          想定にたって味わう客が多いと考えます。 
        以前、場内に何回か入ったことがあるのですが、 
          走り回っている鮪は冷凍物しか目にしませんでした。 
          あの大量の冷凍物はどこで消費されているのでしょうか。 
          鮪は鮨屋以外にも和食屋でも使用されていますが、 
          たしかに和食屋では産地をあまり言いません。 
        しかし、予算1万5千円を超える高額鮨店でも、 
          赤身、中トロ、大トロと 
          その味わい、レベルに 
          店によってかなり差があると感じてしまうのです。 
          延縄の鮪を扱っていない 
          「F水産」の物だけが傑出しているからなのか、 
          実は冷凍物も紛れ込んでいるからなのか、 
          その舞台裏はわかりません。 
        元来、今の時期から夏場にかけては、 
          近海物は脂が落ちてうまくなくなるはず。 
          本鮪やミナミ鮪の冷凍物のほうが、 
          味が上回る場合もあるとは、二郎さんの本にも書いてありました。 
          多くの冷凍マグロがどのような店へ仕入れられているのか、 
          有名鮨店は本当に生鮪を使っているのか、 
          この問題を追及しているフード・レストランジャーナリスト、 
          料理評論家はみたことがありません。 
        近海物神話をただ信じ込むのは問題があるかもしれません。 
          ネタの情報を正確に開示し、 
          冷凍や生を同時に食べ比べさせてくれる店はないのでしょうか。 
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