自腹ゆえに本音、愛するがゆえに辛口。
友里征耶さんの美味求真

第339回
友里征耶のタブーに挑戦 その2
天然鰻は本当にうまいのか

先日栃木県を車で廻っていた時です。
昼時にふと「天然鰻」の看板を目にし、
ためらわずその店に突入しました。
近辺には鮎など川魚を扱っている簗の看板もありましたから、
素直に天然鰻を信じたのです。

私は今まで天然鰻を食べて食感、味わい、香りというか風味ともに
満足したというか、素直においしいと思った経験がありません。
尾花、野田岩などでは以前にも述べましたが
わざわざ頼むものではない物。
京料理の「と村」でも食べたことがありますが、
よくわからなかった。
今回は地方の無名店。
2400円と都心の有名店よりかなり安い価格にもかかわらず、
逆にかなり期待したのですが、
40分近く待たされて出てきたものは、白焼きして冷水で一度流し、
また焼き上げたという「直焼」のもの。
食感はいいのですが、旨みはなく臭みがあります。
白トリュフと同じで、
食べなれない者には理解できないのが「天然鰻」だ、
といわれてしまえばそれ迄ですが、
変わった香りというより臭みに近いもの。
何回食べてもうまいと感じるか疑問です。

先日の日刊ゲンダイに書いてあったのですが、
開高健氏は天然鰻も養殖鰻も
「うまいもはうまい、まずいものはまずい」と言ったとか。
山本益博氏は特に「野田岩」の天然鰻を絶賛していますが、
私が「野田岩」で食べたときはたまたま運が悪く
「まずい鰻」だったのでしょうか。

天然がすべていいわけではないでしょう。
野生の牛(いるのかな)が旨いという人は少ないと思いますが、
牛とて最初から家畜(養殖)だったわけではありません。
いつの間にか、牛は手をかけた養殖がうまい、
高級とされてしまったわけです。
人の舌が慣らされてしまったようですが、
鰻は牛や豚とは違って、天然神話がまだあります。

刷りこみ効果というか、店の主人や山本益博氏が食べながら
「天然鰻は旨いものだ」と唱え続けていれば、
一般客は風味の違いはありますから
そう思いこんでしまうということでしょうか。


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2004年6月18日(金)

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