自腹ゆえに本音、愛するがゆえに辛口。
友里征耶さんの美味求真

第619回
友里征耶のタブーに挑戦 その25
再び日本ワインについて

581回のコラムで取り上げた「日本ワイン」についての友里の主張。
かなりの反響と言うか、厳しいご意見もいただきました。
やや極端ではありますが、日本ワインについて
確信犯的にきつい言い方を敢えてしましたところ、
日本ワインの愛好者の方以外にも、
大手メーカーで日本ワインに携わっている方からの
ご意見もいただきました。
いただいたメールには真摯に対応するのが私のモットーでして、
返事を要求されていた大手メーカーの方にも
例外なく回答させていただいたのですが、
その後はまったく無反応。ちょっと残念です。
別の方のメールでは、
日本ワインに対しての経験不足を指摘され素直に反省した私は、
それから日本ワインを何本も試すことになりました。

まずはネタ集めのため、ワインの仕入れです。
日本ワインに否定的な友里のセラーには、
勿論日本ワインが1本もないからです。
久々にワインショップへ飛込みましたが、
いざとなると何を買って飲んだらいいのかしばし棚の前で思案。
日本が世界に誇る?「甲州」は、
樽を使ったタイプ
(最近鮨屋で樽を使っていない甲州を飲んでいるので)、
そして長野産シャルドネ100%は樽仕込みを、
そしてなんと冷凍凝縮のシャルドネを使った
甘口というのを発見しまして、ここまでは直ぐに決定。

問題は赤です。
まさか、食用ブドウの「デラウエア」などの
ワインを買うわけにはいかず、しばし熟考のあと、
外れが少ないであろう
(おいしくなくてもなんとか飲めるセパージュだろうと推測)、
一番無難なセパージュであろうと考えた
CS(カベルネ)主体のワインを
3千円弱、4千円弱、そして5千円台の3種にわけて購入しました。
甘口がハーフで3500円ほど、
甲州はブティーユでも2千円前後と安いですが、
シャルドネはハーフ2千円前後で結構高い。
よって総額は数万円の投資になってしまいました。
今回は一応メーカー名やワイン名は伏せておきます。
ワインは日本物とはいえ個々にボトル差があるので、
同じワインでも
2回程度の試飲で個々の名を出すのはまずいと判断したからです。
いわゆる大手メーカーのほか、
ワイン専門のメーカーが含まれていること、
長野の厳しい原産地呼称法にのっとったワインも含まれていたことは
開示いたします。

すべての日本ワインを試したわけではありませんが、
それらのワインを飲んだ経験で、結論から言わしていただくと、
「日本ワインは酸やタンニンがすくなく、
よって熟成は難しいのでは?」でした。

シャルドネは、推奨温度が8〜10度と表示されていました。
これを見ただけで、造り手の自信のなさが感じ取れます。
よいワイン、おいしいワイン、ポテンシャルのある白ワインならば、
温度は低めではなく、12度以上の高めで飲まなくては
本当の味わいがわからないからです。
以前にも書きましたが、おいしくないワインを楽しく飲む方法は
「冷やして飲む」のが一番だからです。
有名造り手の優良年の「モンラッシェ」をはじめ
格付け畑の白ワインを、
シャンパーニュ並の10度以下で飲む人はいないはずです。
そのシャンパーニュだってよいものは
10度よりずっと高くなければ楽しめないものです。
かくして、低温ではあまり区別はつかないワインでしたが、
温度が上がっていきますと、
ポテンシャルというより樽などによる
「厚化粧」が目立つものとなりました。
濃いとかいうのではなくクドイものでした。
一番考えられるのは、「酸」の不足ではないでしょうか。
それは気候など風土条件の影響をかなり受けるもので、
技術革新や人の努力の範疇ではないと考えます。
輸送費や関税といった不利があっても、
最近のブルゴーニュでは、
高額取引される村(モンラッシェ系など)ではなくても、
サンヴェランやピュイイ ヒュッセなどの村名ワインでも
この日本ワインと同じような価格で購入できますから、
はっきり言ってしまうと、
日本のシャルドネのCPには疑問が残りました。

次に甘口ワイン。冷凍凝縮によって造られたそうですが、
複雑性のないストレートな甘さを感じました。
甘口ワインは抜栓してからもヘタリが遅いので、
何日もそう味わいが変わらず飲めると思っていたのですが、
1日経ったらかなり味に変化がでてしまいました。
これも酸がたりないからだと考えます。
ソーテルヌ、バルザックの「イケム」や「キュヴェ マダム」など
特別物でない格付けワインならば、
ブティーユ換算で
このワインと同じような価格で購入できるはずです。
甘口も国産かボルドー産のどちらを飲むか
結論はでてしまうと思うのですが・・・

カベルネ系のワインも、値段の高い低いに関係なく、
やはり色薄く、タンニンなども少ないものと感じました。
ボトル差かもしれませんが、透明性のない濁りのあるものまで遭遇。
フランス産オーク樽を使用していても、
やはりフランス産ブドウを使用しなければ
カベルネは無理なのかと思った次第です。
メドックや右岸の有名シャトーのボルドーは高くなりましたが、
それでもそこそこのメーカーのワインは、
3〜6千円の範囲で購入できます。
ということで、私ならカベルネもフランス産にします。

誤解を避ける意味で弁明させていただくと、
今回私の飲んだワインは日本のセパージュではなく、
しかも限られた範囲でしかないということです。
私の知らない、飲んだことのないワインには、
フランスを上回るものがあるのかもしれません。
可能性は低いでしょうが。
これからもお教えいただいたならば、
できるだけ試してみる機会を持ちたいと考えます。
また、日本の「甲州」は、特に酸を感じないので、
「鮨」など酢を使った料理でも
邪魔にならないという利点はあると思います。
知り合いのワインショップオーナーの方も言われていましたが、
有名なシャブリなど酸を特徴とするワインよりは
はるかに鮨と相性がいいとのこと。
しかし、邪魔をしないだけで、
私は相性の良い日本酒を放棄してまで
甲州ワインで鮨を食べようとは思いません。
いくら日本酒好きのフランス人でも、
フレンチに日本酒を合わせる事をしないのと
同じではないでしょうか。
ワインをウリにしている鮨屋に煽られてはいけません。
必要以上の売り上げ増、利益増に貢献する必要もありません。
特に、「甲州」は、結構安いですから、
ワインというだけで高く請求する店には注意が必要です。


←前回記事へ

2005年4月20日(水)

次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ