自腹ゆえに本音、愛するがゆえに辛口。
友里征耶さんの美味求真

第623回
友里征耶のタブーに挑戦 その26
飲むと頭が痛くなるワインが本当にあるのか

またまたかなりの問題提起で、
反響を呼んでしまうかもしれないテーマに
敢えて友里は挑戦です。

ワインで頭が痛くなるものなのか。
別にお酒が得意でない人の話ではありません。
私の親しいライターの方もそうなのですが、
酸化防止剤が苦手だとのこと。
頭が痛くなるとのことで、
最近は「ビオワイン」なるものしか飲みません。

銀座の老舗フレンチというかシーラカンスともいえる
「エスコフィエ」。
オーナー夫婦をはじめソムリエ達までが、
大谷石のセラーでの保管がウリの「シュヴァリエ」信奉者でした。
このセラーに寝かせると、ワインが復活して体によくなるという
理論的には解明できない説明に、
なにか宗教的な盲目さを感じてしまいました。
パリの3つ星レストランのワインより
同じワインでも「シュヴァリエ」経由の方が
おいしくて頭が痛くならないとのこと。
普通のワインはどれも頭が痛くなるが、
シュヴァリエのワインは平気でバンバン飲めると言っていました。
この店の場合は、酸化防止剤の有無とは違うようですが、
一時はすべてシュヴァリエ経由ワインだったはずですが、
最近は普通のインポーターからも仕入れていると聞きました。
フランスから直で引いてくるインポーターですが、
このワインはなぜ頭が痛くならないのか、
または痛くなるワインでも店売りするようにしたのか、
方針転換や店の意向が理解できません。

でも、本当に酸化防止剤がいけないのでしょうか。
最近のなんでも「有機栽培」ブームではないですが、
自然に近い形が理想ではありますが、
日持ちを考えたら必要であると考えます。
酸化防止剤の入ったワインで頭が痛くなるならば、
保存食、たとえばソーセージやチーズでも
頭が痛くなるものなのかどうか、
また、ブラインドというか偽って出された場合、
先入観なしで本当に結果が同じになるのか、疑問です。

似たような批判では、化学調味料があります。
使用の是非は別にして、最近は諸悪の根源のように
叩かれまくっている便利な「魔法の粉」ですが、
アレルギーというのでしょうか、
食べると舌先、唇が痺れるとアンチは訴えております。
私も、手間省きのため
安易に使用するのはいかがなものかと思いますが、
そこまで忌み嫌うものなのか。
予算や価格、スタッフ数といった制限がある店の場合、
化学調味料の使用に逃げる店がなくならないのは仕方ないことです。

使っていないといっても実際は入れている店が多いと
よく裏事情に詳しい業界関係者から聞きます。
使っていないというと、
納得しておいしそうに食べているアンチ化学調味料者も多いとか。
ブラインドではわからない、
表面だけうるさいアンチは多いようです。
料理評論家、フード・レストランジャーナリストたちも、
本当は使用していると聞きました
「あの有名店」などを絶賛しているのですから。

私は別に化学調味料の肯定論者ではありませんが、
痺れるのが嫌ならば、
アンチ論者は「山椒」を使用しないのでしょうか。
中華での使用を特に問題視しているようですが、
四川料理で花椒をかけなくてどうするのか。
麻(マア)のない四川でいいのか。
花椒と化学調味料との痺れは違うと言われれば
終わってしまう議論ですけど。

問題は中華だけではありません。
都内の有名・人気フレンチやイタリアンでも
業務用のドレッシングやソース、ストックを使用しているのは
知られています。
勿論これらにも混入されているのは、
化学調味料のメーカーがこの業界の大手だから当たり前です。
直接は使用していないでしょうが、
意識しなくても間接的に使用していることになります。
本来ならば、化学調味料アレルギーの人は、
イタリアンやフレンチなどの外食も
ほとんど出来なくなるはずなのですが。

アンチの人は、よく店には
自分はアレルギーがあるので化学調味料を使うなと言って
使用を制限するそうです。
でも、私は、蕎麦粉、鯖、海老などと同じように、
化学調味料が人にアレルギー反応をもたらすものなのかどうか、
その医学的根拠に疑問です。

酸化防止剤に化学調味料、
一時は便利で持て囃された時期もあったはずですが、
これほどまでに忌み嫌われるものになってしまうとは。
開発に携わった人は無念でしょうね。
でも、忌み嫌っているアンチが、
結構偽られて混入された料理を知らずにうまいと食べているケース、
業務用の半加工食品に既に混入されているのに
その厨房では使用していないというだけで安心して食べている人、
中華ばかり気にして他のジャンルの料理への混入を気にしない人、
などが結構いらっしゃるようで私は不思議です。

こう書くと、文章の一端だけを取り上げて、
「友里征耶は化学調味料を肯定している。舌が麻痺している」
とあげつらうアンチの方が出てきそうですが、
前述したように私は肯定論者ではありません。
ただ、色々な制限のある店では仕方ないことともいえますし、
表面だけ気にしても、隠れて混入されている
事実がわからないアンチの方も結構多いということです。
アンチだけではなく、
料理評論家、フード・レストランジャーナリストたちも、
使用を否定しているが実は混入している
「有名店」などを絶賛している事実。
よくヨイショの店紹介記事では、
「化学調味料を使用していない前向きな店」
というような記述を見かけますが、彼らはしかし、
正面から化学調味料が悪なのかどうかを
はっきり言明していませんし、
使用している店を批判しているのも見たことがありません。
化学調味料の使用の是非を表立って問わない
料理評論家、フード・レストランジャーナリストたちの存在、
使用を否定しているが実は隠匿してバンバン使用している店の存在、
流通している半完成製品や調味料への混入により
間接的に使用している店の存在、
そして隠れて使用されたらわからないアンチの存在、
などこの業界の大きなタブーの一つと言えるでしょう。

またまた、タブーに触れてしまって
叩かれるかもしれない友里でした。


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2005年4月24日(日)

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