自腹ゆえに本音、愛するがゆえに辛口。
友里征耶さんの美味求真

第627回
フカヒレについて その2
ゲンビレから料理になるまで

前回は入門編として、フカヒレのイロハについて述べました。
今回は、調理法などを簡単に述べてみたいと思います。
ゲンビレからテーブルに上がるまでには
大きく分けて3つの行程があるようです。

[下処理]
ゲンビレを、水を張った寸胴に一晩つけこみます。
そして水を換え、長時間煮て柔らかくする煮戻しの作業となります。
8時間ほど火にかけるそうですが、
底で焦げ付かないように注意するなど
結構手間のかかる作業となります。
また、強い異臭がでるので、この対策を考えなければなりません。
煮戻した後は、ホースなどで5時間ほど水を入れ続け、さらします。
これは臭みを取るためのようです。

そして掃除です。
表面の皮をタワシやフォークのようなものでそぎ落としてから、
ザルにいれて揉み洗いします。
臭みの原因となる、余分な脂肪分を洗い落とすのですが、
これが中途半端だと臭くてどうしようもないフカヒレとなり、
逆に落としすぎると独特の旨みが足りなくなると言うのですから、
面倒な作業と言えるでしょう。
1〜2時間揉み洗いしてから乾いた布巾に並べて水を切ります。
ここまでで24時間はかかるといいます。

次に白湯との鍋にヒレを入れ、紹興酒と塩で軽く煮込んで
布巾に取り出して下処理は終了となります。

[ひと蒸し作業]
下処理品は冷凍・冷蔵しているので、
丁寧な店ではそのまま直ぐに本調理に入らないそうです。
味がぼやけるそうでして、一作業します。
オーダーを受ける度に、上湯を少量ふりかけ、
蒸篭で蒸し上げるのが、この「ひと蒸し作業」です。
しかしこのような丁寧な本調理前の作業をしている店は、
高額店、有名店を含めて数少ないそうです。
かなりの経験と技量が必要な秘伝作業らしく、
面倒なことがその原因だそうですが、この難しい作業に代替する、
「ある物」の力を借りることによって省いてしまうようです。
ずばり、「化学調味料」の使用ですが、
あの有名店が「化学調味料」に逃げて、
「ひと蒸し作業」をやっていない!という驚きがあるほど、
この面倒な作業をしている店は数えるくらいしかないようです。
つまりほとんどの店のフカヒレは、
化学調味料でカバーしているということになります。

秘伝のない店(これがほとんど)に対して、
アレルギーがあるから「化学調味料」を使うなと要求しても、
急に秘伝が沸いてくるものではありませんから、無理なわけです。
アンチは騙されて化学調味料を使用した
「まともな味」のフカヒレを知らずに旨いといって食べるか、
正直に使用しなかったために味のぼやけた
(化学調味料のないという意味ではありません)
「おいしくない」フカヒレを、
旨いと言って食べるかの選択肢しかないのです。

[本調理]
餡かけなどの最終調理です。
ここで始めてヒレは鍋に投入され、
中まで味をしみ込ませる作業が加わります。
広東料理での基本風味は、
老婆鶏ガラの出汁に帯干貝が戻される時の旨み、臭みを混入させ、
そこへ金華ハムの燻製香をぶつけるそうです。

この3行程をしっかり各店がやっていると思っていたのですが、
実はまったく違うということを次回述べてみたいと思います。


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2005年4月28日(木)

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