自腹ゆえに本音、愛するがゆえに辛口。
友里征耶さんの美味求真

第633回
世界一おいしいとは思えない、アッピア

私は料理店の情報を得るのとコラムのネタ探しのため、
かなりの雑誌や週刊誌を購入しています。
そんな中で毎月発行を楽しみにしているのが「大人の週末」です。
メインコメンテーターであるマスヒロさんをはじめ、
色々なフードライターが寄稿しているので、
私の突っ込みネタの宝庫となっております。
最近は「なんでも探検隊が行く」という、
あまり食に詳しくないと思われる編集者の特集記事が
結構笑えて使えます。
特にこの5月号は、
他の企画を含めてかなりのネタを提供していただきました。
今週から来週のコラムにかけて数回ほど遣わせていただき感謝です。

「マスコミに出ない店」特集として
いくつかの店を取り上げていますが、
その中には、何回か本や雑誌で見た事がある店がありましたし、
それを自分の雑誌で取り上げた瞬間
その「うたい文句」は消滅してしまうと考えますが
いかがでしょうか。
「人類未踏の秘境」の探検といいながら、
カメラが先に前方に行って
探検隊を撮影していた茶番と同じと考えます。

なかでも私がびっくりしたのは、
一巻目の拙著でも取り上げた「アッピア」。
かの坂本龍一氏が
「世界で一番おいしいイタリアン」と絶賛したということで、
副題には「世界一おいしい店、の噂は如何に?」となっております。
世界的に幅広い活動を続けられていると思っていた
坂本龍一氏ですが、イタリア本国をはじめ東京でも、
高レベルのイタリアンへの訪問経験はないということでしょうか。
「キャンティ」を集団で抜けた厨房スタッフやホールスタッフが
中心で造られたイタリアンと聞きました「アッピア」。
詳しくは拙著に書いてありますが
(まだお読みでないかたは立ち読みしてください。
銀座の中央通の大手書店ではまだ置いてあります)、
「業界人」が喜びそうなカートでの各種前菜サービスに、
メインの食材もこれまたカートに乗せてプレゼンする、
パフォーマンスだけが目立つお店です。
この店が世界一のイタリアンというのなら、
イタリア本国の店や東京の例えば「ヒラタ」、「濱崎」をはじめ
イタリア風料理を出している有名店は
「イタリアン」ではなくなってしまいます。

単なるヨイショというかリップサービスか、
親しい人が店関係者だったので
「世界一」と言ってしまったとは思いますが、
有名人の一言は怖いもの。
色々引用されてしまって
突っ込みが得意の人間の目にとまってしまうと、
発言者の食事経験、味覚能力を
根本的に疑問視されてしまいますから、
業界人の方々も発言、特にベタ褒めには注意が必要と考えます。


←前回記事へ

2005年5月4日(水)

次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ