自腹ゆえに本音、愛するがゆえに辛口。
友里征耶さんの美味求真

第744回
ワインの諸々 70
ロマコンが225万円とは客を舐めすぎだ

今年後半オープンの話題店に上位ランクインされるであろう
汐留の「コンラッド 東京」にオープンした
ロンドンの3つ星シェフの名を冠した「ゴードン ラムゼイ」。
最近はフレンチというか欧州フュージョン料理と中華料理で、
かなり高い評価を受けている店がロンドンに多いと
昨年久々に訪問したとき知りました。
猫も杓子も欧州の3つ星、2つ星が
日本へ進出してくる時代でありますが、
この店の料理などの評価は後のコラムに譲るとして、
本日はこの店のワインの値付け、
特に世界で最も有名で高価なワインの一つである
「ロマネ コンティ」に対する
この店の値付けについてお話ししたいと思います。

すべてのリストのワインは値付けが高く、
この店では安い部類の1万円前後のワインが、
オープン直後だというのにかなりの種類、
品切れであると断られるなど、
ワインサービスでかなり問題があると感じたのですが、
最も驚いたのが、
リストにあった「ロマコン」の225万円の値付けです。
何十年も前の、
例えば1940年代前の「植え替え」前のロマコンならば
納得もするでしょうが、
この破格の値段をつけているワインのヴィンテージはなんと
「ありきたり」の1989年。
正規代理店であるサントリーの当時の売り出し価格は
15万円前後でしょうし、
その後の相場も30万円前後で推移していたはずです。
私は偶然1990年のロマコンを購入したことがありますが、
サントリー扱いでやはり10万円台。
どうみても、
相場の仕入れの4倍以上のぼろ儲けをしようとしていると
個人的な同報メールで知人たちに回覧したのですが、
ご丁寧にコンラッドの支配人に
問い合わせしていただいた方がおりまして、
その支配人の言い訳に笑ってしまったというか、
あまりに日本人を舐めている態度に(支配人は英国人のよう)
憤慨しました。

ロマコンはモノポール(単一畑)で生産量が少なく、
1989年は素晴らしい年で225万円は巷の流通価格と大差ない
との開き直った回答です。
ワイン初心者でもこれっで納得する人はいないでしょう。
確かに1989年は悪くはない年ですが、
それほどブルゴーニュ、
特にロマネ コンティに関して傑出した年ではありません。
色々なワイン評論家のコメントを見ても
それほど高評価していないワインです。
私は早速知り合いのワインショップやインポーターにお願いして、
現在の相場を調べてもらいました。
ワインのストックではやはりロンドンのワイン商が一番でしょう。
「ラムゼイ」も
地元ロンドンで購入していると推測して調べてもらったのですが、
現在のオファーは日本円に換算して、
下は40万円弱から上は60万円くらいまで。
まずは50万円で1989年のロマコンは
簡単に手に入る価格であることが確認できました。
次に、東京のグランメゾンでのロマコンの価格調査です。
高額ワインではやはり「アピシウス」でしょう。
残念ながら1989年のロマコンはありませんでしたが、
1986年のロマコンが65万円ほどとのこと。
1986年のブルゴーニュはあまり良い年ではないですが、
ことDRC、特にロマコンに限っては
89年とそれほどの質の違い、希少性の違いはないはずです。
しかもこれは仕入れではなく客売りの「レストラン価格」です。
昨年訪問した、「ル シズイエム サンス」では
同じく82年が91万円、70年が92万円、64年が100万円
だったと記憶しています。
82年はともかく、70年や64年のロマコンは
89年より遥かに希少で価格が高いことは、
ちょっとワインを勉強している人ならば常識です。

つまり、
日本の高額レストランのロマコンの値付けよりもはるかに高い、
ふっかけ値付けであることが直ぐにわかった訳ですが、
ご丁寧にこの調査結果をも
件の知人はコンラッドの支配人に連絡したようですが、
日本、特に東京での市場調査が甘い、
日本のワイン好きを舐めているといった指摘にも、
「適正価格だ」の一点張り。
日本のワイン事情を説明してあげようと
ソムリエに会談を申し込んだのですが、
店に来て食事をしながらのディスカッションにしか応じない
(つまり客として金払って食べに来い。
話だけでは受け入れられない)という態度にあきれ果てました。

わざわざ日本のワイン市場やワイン業界の実情を教えてあげようかと
好意で申し込んだのですが、金払って来店したら聞いてやる、
といった殿様商売。
馬鹿らしくなってその後のやりとりを打ち切りました。
あの雰囲気の割に、料理はサービス料を上乗せせず、
1万円前後で楽しめるなど評価する部分もあるのですが、
ワインサービスというか、支配人など経営側の性格におおいに失望。
「ベージュ 東京」でも述べましたが、
この店以上に私は声を大にしていいたい。
「ゴードン ラムゼイ(というかコンラッド 東京かも)よ、
日本人を無知だと勘違いして舐めまくるな」と。


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2005年9月4日(日)

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