自腹ゆえに本音、愛するがゆえに辛口。
友里征耶さんの美味求真

第872回
残念、オストラル

読者の方から新年早々にビッグでビックリな情報を頂きました。
私が知らなかっただけなのかもしれませんけど、
なんとあの交詢ビルの「オストラル」が閉店になったと。
他の店、たとえば「かいか」、「趙楊」、「かつぜん」、
「南漢亭」、「逸喜優」、「璃宮」とちがって、
結構客が入っていたと認識していましたので驚きました。
第一番の閉店は他の店だと思っていたからです。
一昨年の「トレフ ミヤモト」
勇み足事件を経験した友里としましては、
すぐさま確認作業に入ったのでした。

まずは、電話。
「相手の方の都合で通話ができなくなっております」
とのテープがまわっておりました。
私の経験では、この手のテープは
通話料の支払いが停滞した場合のはず。
とにかく尋常な状態でない事がわかりました。
そして、次に交詢ビルの正式HPをチェックしました。
意外にも三井不動産はある程度潔いようで、
HPから「オストラル」の店名は削除、
フロアガイドにも「オストラル」が位置するブースは
空白になっています。
(1/21現在、なんと交詢ビルのHPには
「オストラル」の店名などが復活しています。
しかし、不思議なことに電話番号が明記されていません。
電話は相変わらずテープがまわったままであります。
おそらく三不は潔くなく、体裁を繕うため
HPに店名を復活させたのかもしれません。
一部には、マダムと岸本シェフをはずして、
ほとんど居抜きで「オストラル」の店名を残したまま再開する
と言う話も存在していますが、
これでは名前だけで
中身はまったく違う店ということになりますね。)
そして最後に現地確認に向かいました。
照明を落とした店内に立て看板で、
「店舗メンテナンスの為お休みさせていただきます」の表示を発見、
閉めた店の「決まり文句」の張り紙を読んで
最終確認を終えたのです。
しかし、三井不動産には最後まで潔くしてもらいたかった。
「メンテナンス」なんてごまかさないで、
閉店なり移転なり正直に開示してもらいたいものです。
メンテナンスならいつ再開するものなのか。
大会社がディスクローズを避けるのは許されません。

業界関係者や知人の食通の方の多くの感想は、
「勘違いしないで
あの『カリオカビル』の地下で営業を続けていたら、
こんなことにはならなかっただろう」。
あのビル地下、あの雰囲気にあの価格設定と料理がバランスして
ある程度の人気と評価を得ていたことを自覚せず、
メニュー構成と価格設定を一新し、
内装を含めて一気に高額化してしまったことが原因なのは、
誰の目にもわかると思います。
しかし、ここまで早く結論がでるとは予想しませんでした。
それにしても、三井不動産関係者からの働きかけで
交詢ビル移転を決断したのなら、三不の罪も重いと私は考えます。
他の不振な移転組、
「かつぜん」や「南漢亭」などにもいえる事ですが、
今までの店と違った高額路線、コース料理偏重への転換といった
暴挙を見逃していたというか、
高い賃料を請求するための高額化路線を
三不は黙認してきたと考えます。
デヴェロッパーとしては超一流でも、
飲食店経営のノウハウというか、
誰でもちょっと考えればわかる常識が
欠けているのではないでしょうか。

「表参道ヒルズ」、
旧防衛庁跡の「東京ミッドタウンプロジェクト」など
今後もこの手の再開発が目白押しです。
しかし、店経営者、オーナーシェフ、
独立を考えている料理人たちは、「歴史は繰り返す」ということ、
「オストラル」だけではなく、
例えば六本木ヒルズの「日本料理 小山」をも他山の石とし、
デヴェロッパー関係者からの甘い勧誘に充分注意するよう
警鐘を鳴らします。
土地買収や建設など専門分野はさておき、
このような大手デヴェロッパーでも
飲食店経営のノウハウはほとんどないということです。
恐らく、プロジェクトの関係者は
経営経験のない若いサラリーマンではないでしょうか。
そして大手のデヴェロッパーの経営者や上層部となると、
サラリーマン役員、管理者で、「会社経費族」のはず。
適切なコンサルを期待するのはどちらも難しいと言うものです。


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2006年1月24日(火)

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