自腹ゆえに本音、愛するがゆえに辛口。
友里征耶さんの美味求真

第883回
すし屋もバブルになってきている

一昨年あたりが鮨屋ブームのピークだと思っておりました。
次々と若手の職人が独立し、高額鮨屋をオープンしてきたからです。
実際は、修行歴が数年、
いやまったくない事をウリにする職人まででてきましたから、
保守勢力であるベテランにとっては
苦々しく思われている方もいらっしゃったでしょう。
「江戸前の職人仕事云々」と薀蓄言っても、
たいして修行していなくても
タネさえよければ同じような鮨ができるではないか、
と世間が気づいてしまったある種の革命でもありました。
若い人の独立に刺激されたか、
ホテルなどの寿司屋に勤務していたベテランの独立もありまして、
スシ業界は高級店と回転系の二極化をたどり、
街場の寿司屋にとって厳しい時代になったと私は考えておりました。

しかし、
「ダンチュー 1月号」や「食楽 2月号」でのスシ特集をみて、
私は自分の認識が甘かったことに気がついたのです。
規模から考えて敢えて実名は出しませんが、
「食楽」の「常連になりたい」特集にある
鮨屋(寿司屋の店もあると思います)4店に
驚くべき店が入っていたからです。
昼はバラチラシにしか対応していない店で、
夜もまったくの街場レベル。
しかし、4店とも予算は1万3千円以上とありました。
4店以外の私の知らない店も
ほとんどが予算1万円以上で紹介されています。
ちょっと昔なら、酒なしで1万円以上は高額スシのはずでした。
それが知られていない街場に思える店までが、
ほとんどこの高額ゾーンへ突入してきたのですから驚きです。
「お決まり」ではなく「お任せ」主体に切り替えて高額化し、
集客をはかる戦略なのかもしれませんが、
このスシ屋のバブル現象、皆さんはどう思われますか。

価格と内容が一致するような
CPが悪くない店ばかりではありません。
前述の店以外にも、先日ホテルで25年やっていて独立したという
銀座の寿司屋へ試しに飛び込んでみました。
果たして内容は「鮨屋」ではなく「寿司屋」。
つまり街場かずばり普通のホテルの寿司レベルの店だったのですが、
昼でもお好みで頼んだからか1万5千円の請求に、
まったくその価値を見出せなかったのです。
〆、煮、酢とすべてが中途半端でした。

あの「あら輝」も数年前は一人1万円以下。
「さわ田」も当初は1万円チョイだったはず。
昨今の若手の独立ブームで仕入競争が始まり、
仕入値が上がっているとは思いますが、
高く設定すればいいってものではないはず。
すべてのスシ屋が最高のタネを仕入れられるわけではありません。
どのレベルのタネ質で我慢するか、
そしてそれなりの客単価に抑えるか、身の丈あったといいますか、
タネ質と価格のマッチングがよい店、
パフォーマンスや奇策に頼らず真摯に努力する店しか生き残れないと
私は考えます。
最初に「高額鮨屋の客単価ありき」の最近の風潮に
おおいに疑問の友里であります。


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2006年2月4日(土)

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