自腹ゆえに本音、愛するがゆえに辛口。
友里征耶さんの美味求真

第918回
結構若いじゃん、早川光さん

「東京 大人のウォーカー 3月号」で鮨の特集を読んでいたら、
江戸前鮨の名店といわれる店の解説に
早川光氏が写真付で登場されていました。
皆様、この方をご存知でしょうか。
本業は映画監督とも書かれていた
プロファイルを読んだ記憶がありますが、
「きららの仕事」という鮨の人気漫画の原作者だとか。
私は、「東京最高のレストラン」での執筆陣の一人、
しかも寿司専門の評価人として以前から名前だけは知っていました。

彼は当初から一貫して、
銀座の「ほかけ」の鮨に10点満点を毎年乱発しております。
昔、取材を申し入れて主人の「特別鮨」を食べたら最高だった、
普段の鮨ではなく気合をいれた鮨は最高だと
公言して憚らない人であります。
フード・レストランジャーナリストたちや、
料理評論家が表向き否定する
「特別料理」を認めてしまっている珍しい人です。

しかし、彼の評価する店は限られていて、
「さわ田」、「あら輝」、
「なかむら」、「かねさか」、「しみづ」
などいわゆる鮨ボーイズの店評価を見た事がありません。
(清水氏がボーイズとはちょっと違和感がありましょうが、
実際は若手ということでご勘弁を)

一度気に入ったら絶対評価を変えない。
新しい店へ行って評価する柔軟性というか新規開拓心がない。
気の利いた面白い語り口ではない。
などの印象から、私は早川氏とは、
頭の硬直した老人だと勝手に推測していたのです。
ところが、その雑誌には61年生まれとありました。
まだ40代半ば、なんだ頭だけで体は若いじゃん。
彼の文章の読後感とはかなり乖離した実態に驚いたのでした。
鮨ボーイズに触れないとしても、
「水谷」は褒めてなぜ「次郎」を評論しないのか。
「金兵衛」には行くが「小笹寿し」には行った事がないのか。

鮨専門の評論家にしては、フットワークが悪いというかネタ不足。
曲者が多い東京最高のレストランの
他の執筆陣との軋轢を避けたいのか、
かなり評価基準が他の人と違うと思うのですが、
その辺の検証もされておりません。
奥沢「入船」は本当にうまいスシ屋なのか。
新子安「八左エ門」は評価本に取り上げるほどのスシ屋なのか。
これらは、
一方的に来栖氏や浅妻さんがべた褒めしている寿司屋ですが、
彼らの実績から考えて非常に疑わしい。(友里は既に訪問済)

「さわ田」の昼の握り営業は、
本当に「水谷」を真似たものなのか。
夜の売上がきつい為の窮余の一策ではないのか。
浅妻千映子さんや来栖けい氏、大谷浩己氏は、
本当に鮨がわかる人なのか。対談していてわからないのか。

鮨しか出番のない彼ですから、
どうせ露出するならもっと掘り下げて評論してもらいたと思うのは、
私だけではないでしょう。


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2006年3月11日(土)

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