自腹ゆえに本音、愛するがゆえに辛口。
友里征耶さんの美味求真

第981回
ちょっと格好つけすぎだがお値打ち、未在

京都吉兆の料理長が独立して一昨年、
円山公園の一角にオープンしたのがこの「未在」です。
紹介雑誌には、この道40年もの経験を有しながら店名を
「未だ在らず」にとありました。
中途半端というような店名で商売していいのか、
と突っ込みたくなりした。

円山公園の管理事務所脇を上がったところに位置する店は
隠れ家的で雰囲気は最高。
しかし店前にある屋根付きの車庫がちょっと興醒めします。
夜の1回転営業ですが、
入店は17時半と19時に分けて予約をとっています。
つまり、カウンターを満席にせず、
半分しか客を入れないということです。
京都の和食屋へ通いだして気がついたのですが、
同伴カップルでなくても京都の客は
結構早めの時刻に入店するようです。
18時なんて当たり前。
東京のように、19時、19時半というと
嫌な声を聞かされたこともありました。
よって、17時半の集合というのも、
京都の店では無理がない範囲なのでしょう。

15分前に来店するよう指示されますが、
店に着いても直ぐに店内へ通さず、入り口前のベンチに座らされ、
オシボリと汲み出し紫蘇香煎が供せられます。
早く座ってビールが飲みたいのに焦らされます。
そして予約時刻になってようやく入店。
カウンターは10席ありますが、
前客はコースの後半へ差し掛かっているところでした。
早速ビールを注文したのですが直ぐ出てきません。
イライラしていると、
カウンター内から主人が我々に折敷を手渡してきました。
見ると器が左右と向こう側に3つ。
飯、汁、向付という茶懐石の形式ではありませんか。
ビールが直ぐ出てこない訳がわかりました。
左側の飯、右の八丁仕立てのズイキの汁を食した後、
主人は純米大吟醸を一杯振舞ってくれ、やっとビールが出てきます。
茶事に関心がない人は戸惑い緊張してしまうでしょう。
私もびっくりしました。
小さなカウンター和食でこの作法に拘る必要があるのかどうか。
予約時に説明するべきと考えます。

しかし、その後はお酒も好きなようにオーダーでき、
料理が出てくると頬が緩むこととなりました。
造りは大皿で、鯵は意外でしたが大間鮪、鱧、明石鯛と量も多く、
山葵、柑橘、梅肉とちり酢のほか、
醤油と昆布出汁をゼリー状にしたものが添えられております。
お椀はこの時期、松茸で出汁もよい。
黒毛和牛炙り、綺麗な盛り付けの八寸、
炊き合わせ、強肴の穴子の後、焦し湯で〆てデザートです。
いずれの料理も味、質、盛り付けなど吉兆の流れを感じるもので、
満足しました。

<結論>
コースは21,000円で予算は25,000円以内。
この雰囲気、味わい、量を考えると、
最初はちょっと堅苦しいけどお値打ちの京料理と考えます。
同じ吉兆出身でも、勘違いして飛騨から東京へでてきた
「のり寛」とは比較にならない完成度の料理です。


←前回記事へ

2006年5月13日(土)

次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ