稀には会社の利益と世問の利益がかけ違いになることがある。たとえば、会社によかれと思ってやったことが脱税の罪に問われたり、贈収賄の嫌疑をかけられたりしたとする。官憲の追及が激しく、どこかでトカゲの尻尾切りをしないと、会社の上層部まで禍が及ぶおそれが生ずる。そういうとき、担当者は自分が罪をかぶったり、あるいは、自分がやったことにして自殺をしたりする。「会社は永遠なり」と名ゼリフを遺してビルの屋上から跳び下り、自分の一身を犠牲にするのが必ずしも珍しくはないのである。
同じように、部下が過ちをおかしたり、公金を横領するようなことがしばしば起る。日本人以外の他の国の人なら、早速にも部下にあらゆる罪を押しつけ、場合によっては部下を官憲に告発する。ともかく累がわが身に及ばないように、火の粉がふりかからないように、必死になって努力をする。しかし、日本人は上司にあたる者が引責辞職をする。監督不行届という罪状があって、たとえ直接、法律上の罪に問われない場合でも、上の者は逃げもかくれもしないのである。
日本の会社はこうした共同体意識を社員の一人一人に植えつけ、また一人一人に愛社精神を要求する。そうした訓練を受けた社員によって構成されているので、一糸乱れず、というほどではないけれども、他の国の会社ではお目にかからないようなチーム・ワークができる。そうしたチーム・ワークが工業生産に向けて発揮された結果が日本の今日の繁栄をもたらしたと見ることができるのである。

<来週に続く>

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