それはパーサーやスチュワーデスの客扱いがよいからである。機種も同じ、到着時間も同じ、安全性に対する信頼性も同じ、かつ料金も同じなら、サービスのよい会社が選ばれるのは当然であろう。そういう点では日本の航空会社が選ばれて何の不思議もないが、最大の難点は何といっても、日本発の航空運賃の高いことである。なにしろ日本では、一ドル二一○円台の為替相場になっても未だに二九六円時代のレートで航空運賃を算出しているので、同じ切符を海外で買う値段の倍以上している。このため東京からニューヨークに行く人は、東京で切符を買うより、香港か、ソウルで買って、香港→東京、あるいは、ソウル→東京の切符を破って捨てたほうが安いだけでなく、それでもほとんど半額で買えてしまう。どうしてこんな不合理が生ずるかというと、これこそ日本が世界に門戸を閉ざしている証拠で、日本の運輸省が「日本航空の放漫経営を助けるため」にとっている保護政策の一環である。ちょうど日本の農水省が米作農民を保護するために、国内米価を国際価格の十倍に維持しているのと同じやり口だと思えばわかりやすい。すでにこうした措置は世間で通らなくなっているのに、それでも運輸省の役人たちは、「自分たちは値下げをするように指導しているが、外国の航空会社が反対しているせいで」と世迷い言を言っている。外国の航空会社が少しでも安売りをすると、警告をする立場にいるのが運輸省であり運輸省の逆鱗にふれることをおそれて安売りを控えているのが外国の航空会社の実情である。
その証拠に香港では、日本航空だけが切符売場に貼り紙をしてあって、日本語で「香港不在の者が香港で切符を買うのは法律違反です」と書いてある。外国の航空会社でそんな警告を発しているところは一つもない。また日本航空も外国人に対してはそういう警告は発していない。それどころか、他の航空会社との競争上、香港のみならず、外国の主要都市では安売りの切符を売っている。日本人を優遇するどころか、日本人に対して逆差別待遇をしている日本企業は他に例をみたことがない。それが最近になって、「輸入切符は搭乗拒否をする」「外国の航空会社にも働きかけて協調を要請する」と鉄面皮なことを新聞に発表している。
どうしてこういう不合理がおこるかというと、サービス業はもともと地域的な性格を持っており、国際競争に曝されることがなかったからである。監督官庁も自分たちの思うままに規則をつくり、国内企業を保護しても、たいした支障はなかった。ところが、国際間を飛ぶようになると、監督官庁の支配権の及ぶところは国内だけだから、国内では無理が通っても、国際的慣習とのあいだに大きな矛盾が生ずる。改めて日本人の鎖国思想が問われる形になっているのが航空運賃なのである。

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