お金は一定のところに定着せず、儲かりそうなところへ動く
そうはいっても、お金の動きは一方的なものではない。日本が金持ちになったといっても、日本が世界一におどり出たというだけのことで、世界中のお金を独り占めしたわけではない。またお客がいなければ、お金を払ってくれる人もいないし、物を買ってくれる人もいない。だからお金を儲けたいと思う人はお客をつくらなければならないし、そのためにはお客をお金持ちにしなければならない。さらにまた日本が他を抜いてそんなにお金持ちになれたのなら、どうすれば日本のようになれるのか、その模倣をしたいと思う国々も続々と現われる。
そんなにお金が儲かるものなら、日本の会社に出資してその分け前にあずかろうと考える人も出てくるに違いない。現に為替の自由化をすれば、日本人のお金も自由に外国に出ていけるが、外国人のお金も当然、自由に日本の国に入ってこられる。日本の株を買うこともできる。今はまだ小糸製作所のような僅かな例しかないが、日本人がアメリカで M & A ができるなら、アメリカ人が日本で M & A をやることもできないことではないだろう。
そうなると、お金は一方に流れるだけでなく、どちらにでも流れる。そのなかには工場を建てたり、流通事業に投じられたりするものもあるが、株の投機や為替の投機に動くお金もある。そうしたお金は「遊資」と呼ばれているように、一定のところに定着していないからどっちにでも動く。お金の儲かりそうなところならどこにでも動く。そういうお金から影響を受けることも考慮に入れると、アメリカの FRB の議長だろうと、日本の大蔵大臣だろうと、国力を結集してもお金の流れを制止することは不可能である。自分たちが印刷してふやしたお金が民問の手に渡り、自分たちの手に負えない動きをするようになってしまったのである。
ブッシュがレーガンの遺した双子の赤字をあやしかねて、何の対策もできないとみるや、世界を流して歩く巨大な遊資は容赦なくドル売りに出る。日本の大蔵大臣がいくら買い支えに走っても、一兆ドルの遊資に対してせいぜい一○○億ドルか、一五○億ドルの買いでは息切れすることは目にみえている。だからドル安の方向だと思えば、ドル安が行き過ぎるし、ドル高に U ターンの兆候が現われれば、ドル高が行き過ぎる。遊資が経済に方向をあたえるのではなくて、経済に新しいトレンドが起ったら、それに加速をするのが今日のお金の性格である。それぞれの国の船長の役割を果たす人が舵のとり方をあやまると、転覆をしないまでも、中南米の国々や、フィリピンのようなことになってしまうのである。
そういった意味では、物の流れだけではなく、お金の流れにも注目をする必要がある。お金は。ハスポートがなくとも、テレックス一本、ファックス一枚で、世界中どこにでも動いていくが、奔放に動いているようにみえても、お金の動きを支配する法則はある。まず、お金は人問以上に臆病だから、少しでも身に危険を感ずるとすぐに逃げ出す。力ントリー・リスクのあるところには長くとどまっていないし、お金の儲からないところにもいつまでもウロウロしていない。ただし、安全と有利は必ずしも一致しない。有利性にはどうしてもある程度の危険性が伴うので、どちらを選ぶかということになると、お金の大半は安全性のほうを選ぶ。お金持ちのところへ金が集まったり、お金持ちの国にお金が集まってくるのは、お金持ちのところなら安心だという心理が働くからである。
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