紙本位が富める国に新たにもたらした重大なひずみ
ひところ日本銀行がほとんどみるべき準備金を保有していないことを指摘されて、「ドルは黄金とリンクしているから、ドルで準備金を持っているのは、黄金を保有しているのと同じだ」と時の日銀総裁が苦しい弁解をしていたことがある。その当時といえども、アメリカのドル紙幣に印刷されていた金との交換は形式的なものにすぎなくなっていたが、ニクソン大統領の時代になると、完全に金とは縁を切ってしまった。それでもドルは世界通貨として立派に通用しているから、もともと通貨は交換手段としての機能がスムーズに働いておれば、それ自身が一片の紙片にすぎなくとも少しもさしつかえないことがわかる。金地金よりもドルで準備金として持っていたほうがずっとトクな理由は他にもある。金で持っていると、利息はつかないし、ふえもしないが、ドルで持っていると、利息ももらえるし、国債その他、安全な運用をして利息以上の収入を得ることができるからである。現に、アメリカに対して莫大な貿易黒字を出すと、アメリカから日本に大量のドルが支払われる。
日本の輸出業者はそのドルをドルのまま貯金することもできるし、アメリカで投資に使うこともできる。もちろん、日本円に換えて日本国中で自由に使うこともできる。日本人の大半は、物を輸出して、代金を受け取ったとしても、生産コストの支払いもしなければならないし、人件費の支払いもしなければならない。だから決済代金は一応は日本円で受け取ろうとする。すると、日本銀行はドルを受け取って見返りに日本円を発行する。アメリカから受け取るドルがふえればふえるほど日本銀行の円の発行高がふえる。こういうことが起れば、日本国中が円の大洪水になってしまうことは目にみえている。
ドルが日本銀行に溜まると、日本銀行がそれを運用してお金を儲けるチャンスはますますふえる。一方、ドルを見返りに発行した円は利息を払わないですむから、世の中にこんなうまい話は滅多にあるものではない。したがって、国としては貿易収支の大幅黒字の結果、ドルがドンドン流れ込んでくれば、円を増発する誘惑からとても逃れることはできない。ただし、それをふえるに任せておくと、昨今のように円の大洪水が投機をひき起し、土地や株の値段を押し上げる。
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