ところが、日本人のように、約二十年のあいだに、
対ドル為替が三六○円から二一○円台まで三倍も上がってしまった国の人々は、
自国内ではさんざん物価高に悩まされてきたが、
他国の紙幣に比して日本円が大幅に値上がりしたおかげで、円を海外の紙幣に換算して使うと、逆に安くなって「なるほどこれが円高だな」と実感を抱く場面にぶつかる。日本人自身、円建てでもらう収入が年々ふえているが、円そのものの対外価値が三倍も上がると、外国のインフレがそれに追いつかず、かえって割安になる。たとえば、二十年前に
日本人が三六○円を一ドルに換えて、ニューヨークでプラザやピエールのホテルに泊ったり、パリでリッツやブリストルのホテルに泊ることは、溜息の出るほどお金のかかることであった。しかし、彼我、立場を異にして、アメリカ人やフランス人が帝国ホテルやホテル・オークラに泊ると「痛い、痛い」と思うようになった。現に私はこの原稿をマドリッドのリッツで書いているが、私が払っているリッツの宿泊代は、一日分の宿賃がスペインの人たちの一ヶ月分の平均給与に等しいそうである。こんなことは戦争直後の貧しかったころには想像もできなかったことであった。
その後、産業が発展した国と、そうでない国と国別に所得水準に差が生ずるようになると、金持ちの国の貧乏人が貧乏国の金持ちに劣らない収入を得るようになった。また通貨の強弱によって為替レートが変動するので、金持ちの国の通貨で稼いだ人々が通貨の弱い国に行ってお金を使うときは、こんなに使いでのあるものかと改めてびっくりするようなメリットが生ずるようになった。

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