労働力の生産性は高い国から低い国に転移する
日本の労働力の生産性の高さが先進国への工場移転を可能にした

少なくとも石油ショックが起るまでは、アメリカへの進出を本気で考える日本の企業はそんなに多くなかった。アメリカの労賃は日本よりずっと高かったし、生産技術や経営管理についても日本のほうがすぐれていると考える日本人はほとんどいなかったからである。日本人が焦ったのは、日本の労賃が高くなりすぎたことと、日本のような資源貧乏国で原材料が高くなった分をそのままコストに上乗せしたら、日本製品を買ってくれる人がいなくなるのではないかということであった。だから工場を移すといっても、直接消費国に移すのではなくて、コストが安くてすみそうな第三国へ移すことがもっぱら目標とされてきた。さしあたり韓国や台湾がそうした目的にかなった地域であったが、オートメ化と省エネによってコストの安い製品を再び日本国内で生産する見込みが立つようになると、日本からの輸出が往年の活気を取り戻し、貿易収支は過去の水準を抜いてダントツに黒字幅を拡大するようになった。
さて、こうなると、ドル安円高が進行して、日本の労賃は(ドル建てで計算すると)、ますます高いものになる。その一方で、対米貿易の大幅黒字が定着して、日米間の摩擦の原因になり始めると、将来、アメリカが日本からの輸入に対していろいろと理由をつけて制限し始めることも、考慮に入れなければならなくなる。こうした不安材料を前にして、一番よい対策は、たぶん最大の輸入国、かつ最大の消費国であるアメリカに生産基地を移してしまうことであろう。そうなれば、関税障壁を乗りこえる必要もなくなるし、日本側に黒字を発生させないですむから、予想されるトラブルの大半を避けてとおることができるようになる。

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