労働資源は昔と同じように存在しているけれど、一人あたりの生産性があがって安い価格では買えなくなったばかりでなく、安く売るよりは売ることを制限することによって高値を維持する社会傾向のほうが強くなってしまったのである。人手不足になったのだから、働く意欲さえあれば、仕事はいくらでもある。働くことによって、もっと収入をふやすこともできる。しかし、労働力が売り手市場になると、不思議なことに収入をふやす機会があっても、売り惜しむ人がますます多くなって、最低賃金法は空文と化し、逆に社会全体として最長労働時間を制限する動きが集団の力を借りて法制化されるようになる。
世間では働く人がいないために困っているというのに、働く人たちは労働時間の短縮を要求し、週休一日制が週休二日制になり、さらに週休三日制を採用する会社も出てきた。また社会全体としても、休日をふやすチャンスが多くなり、新しい休日を制定しても、古い休日は廃止しないので、年間を通じて休日はふえる。労働資源の開発がすすんだ国ほどこの傾向が強く、働く人が姿を消して、遊ぶことに熱心な人ばかりふえる。この調子なら、労働力不足は慢性化するから、その解消のために賃金の安い国から労働力を輸入することができるかというと、理論的には可能なことであっても、現実にはほとんど不可能に近い。
どこの国も商品の輸出入には門戸をひらいても、労働力の移動にはきびしい制限があって、労賃の平準化は、あらゆる商品の中で最も難しい。戦後、西ドイツが炭鉱労働力の不足に悩んで、トルコなど中東の低賃金国から労働者を導入したことがあったが、いったん入国させた労働者を国外に退去させることはそう簡単ではなく、外国人労働者の居住区がスラム化したり、犯罪の温床になって治安当局を悩ました前例がある。そのため先進国はどこも労働力の導入にはアレルギー反応を示すようになり、とくに日本のように純血主義で貫いてきた国は外国人労働者に対して堅く門を閉ざし続けている。おそらく今後といえども移民に最もきびしい国であり続けるだろうから、日本国内で賃金を引き下げる競争相手が現われる可能性はきわめて低いと考えてよい。やむを得ないので、日本の経営者は自分たちが身につけた生産技術と資本を持って海外へ出かけていく。それもある時期までは、安くて良質の労働力を求めて、労働資源の未開発国にもっばら駒を進めてきたが、オートメ化が日本人労働者の生産性を一段と押し上げると、アメリカもヨーロッパも開発の余地のある発展途上国に見えてきた。おかげで現地でつくって現地で売ることが可能になってきた。アメリカやヨーロッパの人たちは、自分たちを世界の先進国と思い込んでいるから、なぜ日本企業の進出が可能になったのかわかりかねている。本当は日本における労働資源の開発が進んで、その労働力の生産性が彼らの国の労働力の生産性をオーバーしてしまったからである。そのことをなかなか認めようとしないから、感情的になって話がややこしくなってしまうのである。

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