自分たちが消費者であることを忘れてしまった日本人

資本主義は、財産の私有と自由競争が前提になっている。日本では資本の果実は累進率の高い所得税や相続税によってかなり制限されているし、自由競争も生産者を守るために新規参入をはばまれ、寡占状態におかれている。たとえば、石油化学や鉄鋼業者が、設備投資の拡大をしようと思えば、通産省にお伺いをたてなければならないし、海運業者が新造船をつくるのも、また漁業会社が古い船を廃棄処分にして新造船に入れかえるのも、いちいち運輸省の許可をもらわなければならない。業界が効率的に機能し、全体として成り立っていくことが行政指導の主旨であるけれども、そのために業界への新規参入はほとんど禁止され、設備投資をする場合も、業界の実績に比例した範囲内でしか許可にならない。何ごとも実績が物をいい、業界におけるシェアが重視され、業界が決めた協約にすべて従わなければ仲間はずれにされてしまう。タクシー業者が自主的に料金の値下げをすることさえ、業者間の秩序を乱す者として異端視される。値上げは認められても料金の値下げは許可になる見込みはないのである。
こういう行政指導の下では、業界の秩序は維持されるかもしれないが、自由競争の原理は形骸化される。価格は業界を通して統一され、業界の安定という名目の下に、いったん決まった価格は維持される。電力料金にしても、証券会社の手数料にしても、コストが大幅に下がろうが、原則自由化になろうが、業界でなれあいの料金に決められるか、リーダー・シップをとる大手の決めた料金に同業他社が右へならえをやって、事実上、一商品一価格が実現する。この結果、石油安になろうと、ドル安になろうと、価格が下へ向って調節されることはなくなり、気がついてみると日本の物価は世界中で一番高いものになってしまった。とりわけ日本のタクシー代、電車運賃、航空運賃などはひどいことになってしまい、外国のタクシーを日本の道路上で走らせることができないので比較はできないけれども、たとえば、成田に着いた外国人がホテルへタクシーを走らせると、100ドルではすまないということが起る。日本に来る外国人は、皆、悲鳴をあげている。
高速道路の料金がこれまたべラボーに高い。道路公団の運営になっているせいか、役人あがりの幹部が自分たちの採算ばかり考えて、利用者、消費者の立場は一切考慮に入れない。だから、しばらくするとまた値上げをする。東京で高速道路に上がってすぐ下りただけで四ドルも五ドルもとられることに、外国人がこれまた一驚する。

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