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山田淳一郎さんのトクする税金の話

第76回 生前贈与のための新相続税制
新制度選ぶ?選ばない?
「相続税がかかる家庭」の基本的考え方

相続税がかかるご家庭で
新制度を選ぶか選ばないかのポイントは、
今後所有財産が増えていくかどうかです。
結論は「増える財産
(相続税の評価額が上昇する財産を含む)がある場合には
新制度を活用してその財産を早目に移動する」です。
次に検討してみましょう。

まず、所有財産額が今後変動しないケースです。
たとえば、父の財産額5億円、
相続人が子ども2人のケースでは
相続が発生した場合の相続税額は1億3,800万円です。
このケースで、子ども2人が新制度を選択して
3,000万円ずつ計6,000万円贈与を受けておくと、
父の相続財産は4億4,000万円になりますが、
相続税計算上の財産額は5億円(4億4,000万円+6,000万円)、
相続税額は1億3,800万円となり
上記のケースと同額です(図1)。

これに対して2人の子どもが新制度を選択せず、
毎年300万円ずつ10年間贈与を受けた場合
(贈与の意思決定は毎年行います)、
毎年の贈与税は1人あたり19万円
((300万円―贈与税基礎控除110万円)×10%=19万円)、
2人合計で38万円、
10年間合計で贈与額は6,000万円(300万円×2人×10年)、
これに対する贈与税額は累計で
380万円(38万円×10年)となります。

10年間の贈与が終わってから5年後
父に相続が発生した場合、
父の財産額は4億4,000万円、
これに対する相続税は1億1,400万円です。
この場合の贈与税・相続税合計額は
1億1,780万円(1億1,400万円+380万円)(図2)ですから、
約2,000万円も税金が減少します。

次に、財産が増えていく場合で
価値が上昇する財産を贈与するケースでみてみましょう。
ここからが本件における本題です。

たとえば、母の財産5億円、
相続人が子ども2人のケースで、
子どもが新制度を選択して1億円の財産の贈与を受け、
その贈与財産が相続時には2億円になったとします。
その後母が亡くなった場合、
4億円の相続財産に加算する贈与財産の価額は
贈与時の評価額1億円ですから、
財産額5億円に対して相続税がかかることになり、
税額は1億3,800万円です(図3)。

これに対して、新制度を選択せず
生前贈与も行わなかった場合には、
相続財産が6億円にふくれ上がっているわけですから、
相続税額は1億7,800万円となります(図4)。

つまり、価値が上昇する財産を
新制度を活用して早めに贈与しておいた場合には、
価値の値上り部分に対する相続税
(このケースでは4,000万円)を節税できる効果があります。

最初のケースで説明した方法により、
つまり、新制度贈与ではなく
従来からの原則の贈与税制度を使って
贈与を受けた場合であっても、
相続税の計算上贈与後の値上り部分を排除できます。
しかし、原則の贈与税制では累進税率が適用されるため、
1回に多額の財産の贈与を受けたい場合には
贈与税額が非常に高額になり、
新制度に比べて使いづらく、
新制度の方が活用しやすいといえます。

執筆:(株)東京ファイナンシャルプランナーズ 税理士 五関幸子
監修:公認会計士 山田淳一郎


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