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山田淳一郎さんのトクする税金の話

第89回 生前贈与のための新相続税制
新制度を選択して失敗「贈与を受けた資産が値下がりした」

子どもが親から新制度を利用して生前贈与を受け、
その後、贈与者である親が亡くなった場合、
相続税の計算をするに際して
本来の相続財産にその贈与財産を加算します。

この場合、加算される贈与財産は
贈与時の価格(贈与税評価額)ですから、
たとえ贈与後に
その財産の価値が減ってしまったとしても、
または評価額が下がったとしても
その価値の下落はなかったものとみなして
相続税が計算されてしまいます。

具体例をあげてご説明しましょう。
子どもが父から新制度を利用して
1億円のA社株式(上場)の贈与を受けましたが、
その後A社の業績が悪化して
A社株式の時価が1,000万円になってしまったとします。

その後、父が亡くなりました
(シンプルに考えるために父には
相続財産はなかったものとします)。
もし贈与を行わなければ、
A社株式は父が保有したままですから
父の相続財産であるA社株式の評価額は
1,000万円だったのですが、
現実には新制度を利用して父から贈与を受けていますので
A社株式の贈与時の評価額1億円が
父の相続財産として加算されてしまいます。

したがって、このようなケースでは
せっかく親からもらった資産の価値が
下がってしまうだけでなく、
その価値の下落はなかったものとみなして
相続税の計算に取込まれてしまうという
ダブルパンチとなりますので、
贈与を受ける際には
この点もしっかり認識しておく必要があります。

なお、この他にも贈与を受けた資産が値下がりする
(又はゼロになる)ケースとして、
「土地価額の下落」「建物の焼失や取壊し」
「美術品の破損や盗難」などが考えられます。

執筆:(株)東京ファイナンシャルプランナーズ 税理士 鈴木寛
監修:公認会計士 山田淳一郎


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