オートメ化が石油ショック後のピンチから日本を救った


オートメ化による逆ブーメラン現象さえ現われた


生産工程の効率をあげるためにロボットを使うことは最近の思いつきではない。機械が人間の代りに働いてくれたらどんなにいいかと人間が空想したのは、ずっと昔からであり、おそらく機械そのものがそうした空想から生み出されたものであろう。その初歩的な段階では、人間は機械に自分の手足の代りをやらせることを考えたが、機械に完全に人間の役割を果たさせようと思えば、頭脳の代りもやってもらわなければならない。コンピューター技術の進歩がこうした人間のごく素朴な願望を叶えさせてくれた。
工作機械をつくっている私の友人の一人は、オートメで動くNC旋盤のメーカーの社長であるが、まず自分の工場を自動化して模範を示そうと考えた。完全無人工場というわけにはいかなかったが、今まで三○○人が働いていた工場をオートメ化して四人だけで操業できるように改良した。私も案内されて新工場の見学に行ったが、ロボットを使っているから人間のようなカッコをした機械が工場の中をノッシノッシと歩いている姿を想像したとしたら、えらく失望させられる。ロボットといっても、原料を搬入したり、必要なときに持ち上げたり、下ろしたり、加工したり、次の作業工程に移動したりする機械が、全部自動的に動くだけで、そのための操作をする人はコンピュータ室に一人いる。あとは工場長が一人と、搬入するところに一人と、完成した製品を搬出するところに一人と、いるだけである。昼間はこの四人で働いているが、作業は二十四時間行われているので、昼問の仕事が終ると、自分たちがいないあいだも異常なく作業できるかどうかチェックしたあと、照明を消してから引き揚げる。人間がいると、なまじ目というよけいなものを持っているから、電灯をつけないと何もできないが、機械には目がないから、照明代も節約できる。
そればかりでなく、人間の判断に任せていたあいだは、仕掛かり品が約四カ月分もあったのが、機械による流れ作業をやるようになると、二カ月分ですむようになった。二力月分も、製造工程にとどまっている中間製品がなくなると、月に五○億円、年六○○億円の売上げをしてきた会社だから、材料費だけでも五○億円や六○億円の資金が寝ないですむようになる。「ですから、これは労働力を節約するオートメではなくて、お金を節約するためのオートメなんです」とその友人はしきりに私にオートメの長所を強調した。オートメ化によって、少ない労働者で広い作業場を管理できるようになったばかりでなく、資金の回転が著しく改善され、財務内容が一段と健全化したのである。
オートメ化された日本の工場を見学に来た外人さんは口を揃えて、「よくこれで組合側が黙っていますね」とさかんに疑問を投げかける。ある有名な家電メー力ーのトップを務める私の友人は、それに対して「オートメ化は皆がやりたがらない汚れ作業とか、すぐやめていく女子作業員の働いている部署ですすめられているのです。だから効率があがるだけでなく、皆から歓迎されています」と説明している。たとえば、ペイントの吹きつけをする作業とか、重い荷物の上げ下ろし、あるいは、運搬する工程が機械化されれば、作業員たちが喜ぶだけでなく、効率もうんとあがるようになることは間違いない。
むろん、何でもかんでもオートメ化ができるというわけではない。どうしてもオートメ化の困難な労働集約的な業種は、国内でオートメ化がすすむのを横目で睨みながら、労賃の安い海外に出ていく。しかし、オートメの可能な分野では、ドンドンとオートメ化がすすみ、日本の生産事業の体質はみるみる改善されていった。

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