第306回
「自らを貶損して以って権を行う」のが真相か?

「この人は私の数十倍もお金を稼いでいる立派な人だ」
という当時国家主席だった
江沢民氏の言葉について、
これにはどういう背景があったのでしょうか?

唐突ですが、最近、
陳舜臣氏の『耶律楚材』という小説を読みました。
陳舜臣氏の作品、
特に中国の歴史に関するものは
一通り読んでいましたが、
『耶律楚材』だけは
読んだことがありませんでした。

耶律素材は13世紀、契丹人です。
それ以前に栄えた契丹人王朝「遼」の王族の末裔で、
「遼」を滅ぼした女真族の
「金」の副首相級の要人を
父としていました。
自身も金の官僚の道を進みましたが、
当時台頭してきた「モンゴル」に降り、
チンギス・ハーン以降、
「元」を打ち立てることになる
フビライ・ハーンが活躍する直前まで、
モンゴルの名宰相として、
中華文化を擁護したなどで知られた人物です。

当時の漢族王朝は「宋」です。
(北南)宋ほど外圧に苦しんだ王朝も珍しいのですが、
それだけに、排他的かつ中華思想的な
「朱子学」が芽生えたのかもしれません。
ともかく、契丹人であること、
モンゴルに降ったことなどもあってか、
現在の中国でもそれほど知名度の高くない人ですが、
『耶律楚材』では、
非常に生き生きと当時の状況が描かれていました。

その中で、当時の、というか、
中華世界伝統の政権担当者の理想像として、
『春秋公羊伝』の
「権を行うに道有り。自らを貶損して以って権を行う」
という言葉を引用しています。
それを地で行ったのが
耶律楚材だった、ということです。

「政権を担当するものは、
 自分を貶めそこなうようにして
 権力を行使しなければならない」

江氏の意識にそうした考えがあって、
上述の言葉となって現れたのではないか、と、
『耶律楚材』を読んで、
留学時代の古い疑問がよぎり、
氷解した感じがしました。

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2005年4月27日(水)

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