日中を股に賭けるビジネスマン・千葉鴻儀さんが見た光と影

第26回
北京人

初めて北京に行ったのは1985年です。
当時、経済改革路線を進めた中国では
個人経営の飲食店や売店が輩出し
愛想の悪い国営企業と違って
サービスレベルは格段によくなりました。

友人と一緒にある個人経営のレストランに入って
食事をしようとした時の出来事でした。
店主から渡したメニューを眺めながら、
「この店は肉料理ばっかりだね」
と、思わず友人と悪気なく笑いました。
すると、店主は顔を真っ赤にして我々に向かって
「おれの店のことを馬鹿にしているのか。」
といきなり怒鳴ってきました。
結局、お互いに言い合いになった挙句、我々は店を後にしました。
北京人って、商売よりも面子、ということが
この些細なことから良く分かりました。

中国人の中で商売に向かない人種は北京人でしょう。
長年皇帝のお膝元にあり、中国を統治していた役人の町のせいか、
北京人は高いプライド(悪く言えば、傲慢さ)を持っています。
特に北京以外の地方からの人達に対して
ついつい高飛車の態度を出しがちです。
北京人と話しをする時、威圧感を感じる人が少なくないはずです。
商売上でも役人みたいな態度を出すのは北京人ぐらいです。
中国で一番サービス精神のない町は北京
と思われてもしかたありません。
かといって、北京人は決して堅苦しい人種ではありません。
北京人ほどユーモアで話術に富んだ中国人はいません。
北京人はみな漫才師と言われるほどです。
集会、ホームパーティ、食事会など、
広東人や福建人だけならつまらないが、
北京人が一人でもいるとすぐさま賑やかになり、
北京人が話題を独り占めしてしまいます。
王朝の変遷、世の中の栄枯を身近に見てきた北京人は
どんな逆境にいても
巧みなユーモアセンスでかわす知恵を身に着けています。

一方、政治への熱心さは北京人にかなう人はいません。
多くの北京人にとって政治は食生活の塩と同じく、
政治を語らない生活は想像できません。
北京人に政治を語らせると、それぞれ独自の理論を展開してしまい、
北京人が二人以上いると、
つい政治論争まで発展するに違いありません。
政治と切っても切れない縁を持つ北京人は
政治背景、出身を重んじ、
ビジネスに対しても、
経済性分析よりも政治背景の分析が優先されがちです。
北京の企業が投機的で実務的ではないと言われているのは
そのせいかもしれません。
北京人や北京の企業と付き合う時、政治家や役人の誰かと友達とか、
どこかの大企業がバックにあるとかの話しをさりげなく出せば、
効果的と言われています。


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2006年7月7日(金)

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