東洋証券・深堀マネージャーが
中国企業と株についてわかりやすく解説します

第70回
中国最大手の損保
「中国人民財産保険」が本日上場

香港で今年最大規模
(約780億円)の調達資金と見込まれている
「中国人民財産保険」が本日(11/6)、
香港H株市場に新規上場します。

同社は中国損害保険業界の最大手で、
02年実績では国内シェア70.5%を占めています。
自動車保険と火災保険、運送保険が主力ですが、
昨年末の保険業法改正を受け、
今年3月から傷害保険、医療保険分野にも進出しています。

主力の自動車保険や火災保険はいずれも、
法人向けの割合が高いのが現状です。
今後、個人による分譲住宅の取得や自家用車の普及により、
個人(家庭)向けのウエイトが
徐々に高まってくるものと考えられます。
個人向け「くるま・住まいの保険」のほか、
「からだの保険」も高成長が期待される商品分野の一つです。

日本では傷害保険は損保、
医療保険は第三分野保険というのが一般的ですが、
中国では傷害保険及び医療保険は
保険商品の分類上「生保」となっており、
今年から損保による両分野への参入が認められたばかりです。
(ただし、医療保険の扱いは当面、
 保険期間の短い商品に限られます。)

傷害保険にいち早く参入した同社は今後、
AIG(米)との事業提携を通じて
医療保険、傷害保険の商品ラインを
大幅に充実する計画です。

中長期的には、保険市場の拡大はもちろん、
保険業界における規制緩和も
業績を左右する重要なファクターです。
現状では、保険会社による株式や不動産といった
期待リターンの高い資産クラスへの投資が
まだ認められていませんが
(昨年の保険業法改正で、
 証券投資信託が新たに資産運用対象に加えられた)、
中長期的にはこうした業務規制が緩和される方向にあります。

【公開要領】

市場 : 香港メインボード(香港H株)
銘柄コード : 2328
上場日 : 11月6日
額面 : 1元
公募価格 : 1.80香港ドル
03年予想PER : 11.3倍(期中平均株数によるEPSで計算)
予想PER(参考) : 12.9〜14.5倍
 (上場後発行済株数による EPSで算出)
発行済株数 : 10,732,000千株(上場時)
公募株式数 : 3,005,200千株
 (下記の売出株数を含む。香港での一般公募は300,520千株)
売出株式数 : 273,200千株
売買単位 : 2,000株
大株主 : 中国人保(PICC)ホールディングス(72.0%、上場時)
主幹事 : 中国国際金融有限公司(CICC),モルガン・スタンレー(アジア)

【業績その他】

詳細は割愛させていただきますが、
02年12月期連結の正味収入保険料収入は
363億8千万元と前年比5.3%増となっています。
同社のIPOに関して、
当初は公募価格のレンジが
1.3〜1.7香港ドルでしたが、
海外での好感触を受けて
1.6〜1.8香港ドルに引き上げられました。
一般公募倍率は100倍を超えて
上限の1.8香港ドルで決定しました。

これは先週(10/30)新規上場した
「中国航空科技」(前号参照)の順調な株価推移も
大きく影響していると思われます。
また、AIG(米)グループが今回のIPOを機に
同社へ資本参加(発行済み株式の9.9%を取得)することからも、
同社への信頼と新たな展開に対する
期待感の高まりの要因にもなっていると思います。

いずれにしても急成長する中国経済の発展と
社会の安定に伴なって、
中国の保険市場が急拡大するのは間違い無いと予想されます。
NON香港の記事によると、
これまで香港市場には
保険業務をコア事業に据える企業が少なく、
今後「中国の保険業」という新しいセクターが
誕生することになる。と、報じていました。

中国保険監督管理委員会は今後
「中国人寿保険」、「中国平安保険」などの
大手保険会社の香港上場も計画しています。
そうした流れからも、今回の同社の上場は
今後に影響する重要なポイントになっていると思われます。

当ページは、投資勧誘を目的として作成されたものではありません。
あくまで情報提供を目的としたものであり、一部主観及び意見が含まれている場合もあります。
個別銘柄にかかる最終的な投資判断は、ご自身の判断でなさるようお願いいたします。

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