第3回
導引は、主動的に血の状態を整える運動法である

気血の状態で体が病気かどうか、
あるいは病気の程度を判断するという中医学の診断があります。
また、治療の時にも中医学の各治療法は
気血を調整して病状を改善します。
中医学は、気血の生成・流れ・消耗の状況を五臓の機能に繋げて考えています。
中でも、血の状況は筋肉関節の動きと密接な関係があります。
血の状況に関しては、特に心・肝・脾三つの臓器の機能と関連します。
心は、血の巡りを統轄し、推進する臓器です。
肝は、血の巡る量をコントロールして、
筋(すじ、腱、神経の総称、主に関節部分の軟組織)を養います。

脾は、穀食を消化して気血を作り、四肢と肉に栄養を供給する臓器です。
ですから、心肝脾三つの臓器の機能が弱くなる時には、
血の量が少なくなり筋肉関節が病態になってしまいます。
逆に筋肉関節の動きが少なくなると、血の給養をそれほど必要としなくなり、
血の新陳代謝のシステムに悪影響を与えてしまいます。

古代の中国人には
「流れは腐らず、戸のささえは虫が食わず」という認識があり、
病気の治療にも同じような理論があります。
それは「不治已病治未病」ということばで、
病気の治療ではなく、病気になる原因を解消しようという意味です。
導引は、筋肉関節を和らげるように動かして、
筋肉関節の状態を良くすると同時に、
気血を消耗してから血の新陳代謝を促進して、良い体内環境を作る運動法です。

中国では2千年前の漢の時代に、中医学は確立しました。
そのため日本では中医学のことを「漢方」といわれています。
当時、中国では、生薬療法を含めて治療法は五つありました。
導引按・鍼・灸・生薬・祝由のことです。
ことに「導引按」療法は各治療法の首位になっていました。
その理由は、一番古い療法であることの他に、
主動的に血を整えるという大きな理由があります。


←前回記事へ 2002年10月24日(木) 次回記事へ→
過去記事へ
ホーム
最新記事へ