第7回
伝統導引功法『五禽戯』(ごきんぎ)

中国の伝統的な導引練習の方法を
「功法 gongfa」と呼びます。
歴史的に古くから伝わる導引功法の中でも
五禽戯(ごきんぎ)は、
代表的な功法のひとつとして有名です。
五禽戯が有名になったのには
次のような理由があります。

まず、創始者が華陀(かだ)という
中国古代の名高い医者であったこと。
彼は麻酔薬を見つけて世界一早く臨床使用した医者です。
そして、五禽戯を練習する根拠を中医学の考えに求めたこと。
創始者であり医者でもある華陀が述べた中医学の考えとは
「開き戸の支えは虫に喰われない」というものです。
つまり水穀精気が消化され、
血が淀むことなく体を駆け巡ることができるようにして、
病気にならない状態にすることを目的としたわけです。
さらに、華陀の弟子である呉普氏は
五禽戯の練習をやり続けていったところ、
90歳を越えるまでになったという記載も残されています。

また、漢の時代の前までの導引練習は
動作と動作の間に繋がりがなく、
単独の動作としてそれぞれ練習したそうです。
現在のように動作を組み合せた
一つの系統的な練習法へと変わり始めたのも五禽戯からです。

五禽戯は、五つの組の動作で五種の動物を真似て、
頭・脊椎・腰・四肢を動かします。
その五種の動物とは虎、鹿、熊、猿、鳥です。
以下、ごく簡単に紹介しておきます。

1.虎戯…この組は虎が欠伸するような姿勢に体を伸ばしたり、
       曲げたりする動作で、脊椎を中心とした練習法です。

2.鹿戯…この組は鹿のように首を回して
       視線を左右に届かせる動作です。

3.熊戯…この組は熊が立ち姿勢で前へ進むように歩く動作で、
       腰を左右に回す練習を中心とします。

4.猿戯…この組は猿がジャンプするような動作で、
       膝、足首の関節を中心とした練習法です。

5.鳥戯…この組は鳥が飛翔するような動作で、
       四肢、身体を伸展する練習法です。

五禽戯についてはさらにもう一つの考え方があります。
五禽は五行、五臓に対応するというもので、
木と鳥、火と猿、土と熊、金と虎、水と鹿となります。
それぞれでいうと、虎戯は肺を強化する、
鹿戯は腎を強化する、熊戯は脾を強化する、
猿戯は心を強化する、鳥戯は肝を強化するなどの
臓腑強化の効果があります。

五禽戯は,こうして各時代の練習者によって
それぞれの特徴を取り入れ、
さまざまに変化しながら伝えられてきたので、
今ではたくさんの流派や練習方法があります。


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