第60回
精気神と腎

前回は一身の主宰とする神を
整える心についてお話しました。
引き続き今回は、
五臓の中で物質と動力の貯蔵・提供を担う臓
――「腎」についてお話しようと思います。

腎という機能システムは、
体内での一切の生命活動の基礎として働きます。
腎にはもう一つの名前があって
「命門」と呼ばれています。
生命活動はこの門から始まるという意味です。
その考え方はこれから紹介していく腎の働きから
理解されることと思います。

第一に、腎は生命の基礎物質とする精を管理し、
体の生長発育及び生殖の機能を行います。
胎児として形成された時に
親からもらった先天の精を腎に貯えて
生命の基礎成長を促進します。
のちに後天の精ができてからも
同じように腎に貯蔵します。
そして腎は貯蔵した精を
五臓六腑などの全身へ提供し、
生命活動を促進します。
腎が提供できる精の質と量は、
生命が持つ寿命の長短や身体の強弱状態に影響します。

第二に、腎は気も収納して
生命活動の動力を管理します。
腎の働きによって
先天の気と後天の気が結合されて
生命活動を動かします。
親からもらった先天の気を
腎に蓄えて生命開始の原動力となり、
その後呼吸で自然界清気の吸入・転化する作業は
腎も参加します。
腎は生命活動が必須的な動力(気)の提供も働きます。
生命活動の中に体内水液の代謝は
腎がコントロールすることだという中医学の考えがあります。
これは腎には気を整える働きが基本的にあるからです。
つまり腎の働きが弱くなると、
気の提供も弱くなり、
水液代謝に整える機能も働かなくなるということです。

第三に、腎は精と気の貯蔵・提供を行いますので、
神の範囲に属する記憶力や視聴の感覚機能などにも
関連が深くなります。
具体的に言えば、腎と脳の関係、
腎と耳の関係、腎と目の関係ということになります。

このように、
腎は精と気を貯蔵収納する機能を持ち、
特に先天の精と気をコントロールするので
五臓六腑などの器官組織を滋養し、
様々な生命活動を促進します。
従って腎が弱くなると全ての生命活動に影響します。
健康維持と健康回復に対して腎を養うことは
基礎的、重要な内容であると思うでしょう。


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