第69回
姿勢の「中正」

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しばらくの間ご無沙汰してしまいましたが、
『太極導引』健康法についての紹介を再開いたします。
これまでの内容を引き継ぎながら、
さらにお話を続けていこうと思います。
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今回は、『太極導引』の練習内容の一つでもある
姿勢のことからお話することにしましょう。

姿勢の「中正」とは
『太極導引』練習の基本内容の内の一つであり、
練習時に終始一貫稽古している内容でもあります。
つまり套路の最初の「太極起勢」という動作から
最後の「太極収勢」と いう動作まで、
すべての動作を動かす練習を通じて
この「中正」という基本内容を稽古 しているということです。

一般的な「中正」の概念は、
考えや話の内容が客観的立場にあり、
相違する意見のどちらにも近寄りすぎない状態でいる意味です。

『太極導引』の場合でいう「中正」の概念は
「中」は真ん中の意味であり、
「正」はバランスがよいという意味です。
具体的にいえば、
「中」とは、身体の重心(体重)を
前(つま先部分)後(踵部分)
左 (左足あるいは片足の左側)右(右足あるいは片足の右側)
に載せることでなく、
体勢の真ん中、中心部に載せることになります。
「正」とは、導引練習中にとる様々な姿勢がバランスの良い、
安定感のある状態であることを言います。
特に背骨(頭部を含める脊椎)を真っ直ぐ立て、
上体をピンと伸ばすような姿勢にすることです。

姿勢の「中正」を稽古することは、
体内の身体構造に対して、
内臓、背骨、関節などの位置と正常な状態を維持し、
それらの生理機能がスムーズに発揮できるような
安定感を与える体勢にすることです。
身体の動きに対して、
常に動きやすい動作の原点状態を維持することです。

『太極導引』を稽古する際、
すべての動作の重心は姿勢の真ん中に置いているわけではなく、
片足に偏ることも少なくありません。
しかし、そのような動作を行っている時も
「中正」の基本から外れないようにしなければなりません。
まず意識上に「中正」を維持し続けることが大事です。
「中正」を維持する意識を持ちながら動作を行います。

座ったままで仕事や勉強をする時間が長くなってきた現代人には、
背骨(脊椎)にかかわる病気や良くない症状が出やすいのです。
肩こり、頭痛、手の痺れ、腰痛、坐骨神経痛などの
発症原因の一つには、
日頃からの背骨(脊椎)の状態と
背骨の動かし方にも関連があるといえます。
ですから『太極導引』の「中正」意識を育てることは、
現代生活においてもまた有意義なことです。


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