第68回
養生は体内外環境の協調平衡もすべきだ

今まで養生について
精気神の整えを中心内容として、
五臓六腑、経絡などの体内環境を調整、
協調する内容のお話をしてきました。
そして今回は、中医学的な養生に関する
もう一つの内容をお話したいと思います。
それは、体内環境と体外環境の
協調平衡を軽視するのはいけない
ということであります。

中医学的な体外環境とは、
体内環境の対照として皮膚の外にある環境のことです。
具体的にいうと、
自然環境と人間社会環境の二つからなる
人間生活環境を指します。

自然環境には、
主に生活している地域の気候気温状態と
地理状態の二つの環境状態を含みます。
また、社会環境とは人間特有の環境のことで、
家庭環境や職場環境などの
人間が活動する環境を指します。

中医学では、
これら体外環境との協調平衡をとらないと、
なかでも特に自然環境に順じないと、
体の様々な生理機能に関わる病気や
精神心理的な病気を起こしやすくなると考えます。

気候とは風・雨・雪・雷などの天気状態のことで、
気温とは温・暑・涼・寒などの季節温度状態のことです。
中国の古代では気候気温のことを
「天時」と呼んでいました。
天時にはずっと変わらずに行くことではなく、
季節転化や天気変化などの自然現象があります。

春夏になれば温かくなり、
体は熱が溜まりやすく水分の発散をしやすくなるので、
清熱(熱をおさめる)と
生津(体内水分を保つ)を注意しておかないと
相応的な病気を起こします。

春夏は昼間の時間も長くなりますので、
活動的になって体の動きも多くなります。
そうすると疲れやすい、
あるいは不眠症などの症状が出やすくなります。

春夏とは逆に、
秋冬には寒さや湿などに関する病気を起こしやすくなります。
このように天時に応じなければ
「風・寒・暑・湿・燥・火」の六つの自然現象は、
病気になる体外因素
(中医学用語で外因と云う)になってしまいます。
古来の言葉に「天人相一」というものがありますが、
人体は自然環境と一体であると
古くから考えられていたのでしょう。

地理とは、山地や平原や乾燥地や
潮湿地などの生活地域をいいます。
こうした生活地理環境の特徴を気をつけないと
湿邪や寒邪などの邪気が
体に侵入しやすくなるような状態も引き起こし、
病気を生じます。


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