第78回
『太極導引』の円 その二

『太極導引』鍛錬の顕著な特徴とする「円」運動について
お話を続けていこうと思います。
今回は「円」運動のもう一つの動き、螺旋運動のお話です。

円形線路と回転運動という二種の円運動により
螺旋運動は身体の動きと手足の動作の中に隠して行っています。
つまり、他の動きと一緒に行っているということです。
もっと明白に言えば
伸屈昇降の動作と回転運動を合わせた総合的な動きともいえます。

『太極導引』鍛錬の中によくある動作でもある
拳を突き出す動作を例として分解してみます。
この動作は、腕を曲げて
脇においてある拳を運んで突き出していくという動きです。
拳を動かす過程では、
拳状の手のひらは上向きの状態から
横向き或いは下向きの状態へと回すことで変わります。
この動きは腕の回転運動となります。
そして今度は、拳を突き出す動きを見てみると
肘関節と肩関節を曲げた状態から伸ばした状態へと変動しています。
このように拳を突き出す動きは、
肘肩の関節を伸ばして腕を回転しながら拳を突き出していく
というふうに動作していることがわかります。
つまり、肘以下の前腕部と拳は回転しながら前へと動きます。
このような動きを螺旋運動というわけです。

腕を伸ばし出す動きの螺旋運動のほかに、
腕を曲げて戻る動きの螺旋運動もあります。
それから、足の螺旋運動もあります。
更に上体の螺旋運動も行っています。

肢体の螺旋運動を行う意義は、
全身の筋肉、靱帯、関節を充分に動かして柔らかくし、
血行を良好に促進することにあります。
中医学(漢方医学)の視点で考えると
螺旋運動には体表にある筋肉、皮膚、関節を
伸長したり弛めたりすることで、
経脈の中に流れている「気血」の運行を整える効用があり、
さらに経脈の繋がりにより、
筋肉を司る脾、皮膚を司る肺、関節を司る肝と、
三つの内臓の働きを整える効用があります。


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