第77回
『太極導引』の円 その一

『太極導引』鍛錬では「円」運動を行うことも
顕著な特徴としています。
今回は、この円運動についてのお話をしようと思います。

一つ一つの動作を動かす時、
『太極導引』の鍛錬では三つの円運動を行っています。
それらは円形運動・回転運動・螺旋運動という内容です。

まず、円形運動からお話します。
円形運動とは、手足の運動軌跡を指し、
円形の軌跡により動きを行う運動方法です。
動作は途中で止まることなく続々として流れ、
動作が全て完了するまで連続する運動方法です。

このような円形で連続する動きは
時間の流れという現象を模倣する運動方法ではないかと思います。
昼夜交替と四季循環といった時間変化は、停まらず、
いつからいつまでというような区切りは
特にないですけれど、連続して流れていきます。

つぎに、回転運動についてお話します。
『太極導引』鍛錬の回転運動のお話の前に
一つの実験例を紹介しましょう。
1本の棒の上端に、
同じ長さの2本の糸の一端をそれぞれ結び付け、
もう一端には重い珠を個々に繋げます。
棒を立てた状態で動かさない時、
二つの珠は棒の傍に垂れています。
そして、今度は棒を回転させると垂れていた二つの珠が、
棒から離れるようにして
棒の周りを飛ぶように回る現象が起こります。

この現象は、皆さんもご存知のように物理学でいう遠心力現象です。
『太極導引』鍛錬は、遠心力現象を生かしています。
棒にあたる上体が回転することにより
放松状態にある手足は
ちょうど上記の実験の糸のような動きをします。
このように上体が回転することは
「円」運動の一つの表現となります。

回転で身体を動かすことは、
遠心力の作用により
体内の「気血」流れを促進する方法です。
特に手足四肢の「気血」のめぐりが悪い状態の改善と
血症(血が固まって塞がる病理状態)の改善には
有効な健康養生の方法であります。


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