“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第5回
毎日の営業も味の限界をつくる

また、専門料理店ではお客の来る日を店側が選ぶことはできない。
いつ、どんな客が来てもいいように、
常に安定した料理が提供できるようにしなければならない。
同じ料理が日によって、とても美味しいときと、
そうでも無いときがあってはならないのだ。
ということは、食材としては最良の状態の良さよりも、
最悪時でも質の低下が少ない、
という安定性を優先することになる。

素人は失敗を恐れずに、
最良のものにチャレンジすることができる。
失敗したものは、お客に提供せずに、
こっそりと後で自分で食べてもいい。
このように冒険ができることは、
素人料理の大変有利な点となっている。
また、素人が仲間を自宅に呼ぶときには、
かなり前から、そのスケジュールがわかっていることが多い。
すると、準備も入念にできるし、
なんといっても熟成させて美味しく食べられるものを、
準備することができる。

例えば、豆腐の味噌漬け。
これは深い味わいになるには、1ヶ月以上の期間が必要だ。
鼈甲玉子の名前で知られている、卵の黄身の味噌漬けにしても、
最低1週間の漬け込み期間がいる。
また、市場に出回りにくいものを仕入れるのも、
時間が必要なことが多い。
プロが熟成して旨いものを仕込むのは、
その後の客の予約状況を提供するメニューとともに、
把握しておく必要がある。
誰がいつ何を注文するか分からない状態では、
熟成の準備を満遍なくしなければならず、
それには多大な手間とコストが必要で、
注文しなかったものは捨てなければならなくなる。

また、例え、予約専門の店であっても、
熟成品を常時準備しておくには保管スペースが必要であるので、
現実的な商売には向かない。
このような観点から専門料理店では、
本当に最高の味を提供するには限界があるわけである。


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