“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第9回
最高の食材を用いた宴

再びdancyu誌の取材の話に戻る。
結局築地場内市場で仕入れた魚介類は、
星鰈、アオリ烏賊、房州産マダカ鮑、天然車海老、
北海道産イクラ、北海道産馬糞海胆であった。
いずれも、いまが旬の中卸からの仕入れで、
懇意の鮨屋のご主人に
事前に案内してもらっていたのが役に立った。

アオリ烏賊は裁いて、
身はちょっと塩をして数時間おいてから刺身に、
そして、ゲソとエンペラは半生干しにした。
アオリ烏賊は、新鮮なうちに食べても
しゃきっとした歯ざわりがいいが、
少しの時間熟成させると、肌はもっちりとした触感がでてきて、
そこに甘みが乗ってくる。
鮑も黒鮑、めがい鮑など、いろいろと種類があるが、
高級鮨屋で使われているのはマダカ鮑が多い。
これは、黒鮑とめがい鮑の中間の硬さで、香りがいい。
それも、房州は大原の鮑は最高とされている。

最近は大原には鮑漁師がほとんどいなくなって、
大原の鮑は幻に近いが、
それと同等の鮑が隣の浜である岩和田で獲れる。
きくところによると、
岩和田の漁師は大原へ向かって斜めにもぐるそうなので、
実質的には大原産のものだ。
鮑は水貝、刺身などの生を好む人も多いが、
何と言っても火を通すと甘みが最高にでてくる。
江戸前の鮨屋は鮑は必ず煮てから握る。
天麩羅も最高に旨い。

今回の宴会では鮑は目玉のお品書きということで、
炭火で焼くことにした。
それも、肝を絡めてホイルに包んで
香りが逃げないような配慮をして焼いた。
仕入れた鮑は幅が三十センチはあろうかという大型のもの。
マダカ鮑は大きいほど旨い。
肝を絡めて焼いたものは、香味のバランスが最高で、
天にも昇るようであった。
関東に生まれてよかったという一瞬であった。


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