“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第8回
魚を美味しくする一仕事

魚は新鮮なだけでは旨みが無いということを紹介したが、
熟成に加えて様々な美味しくするための裏技がある。
塩をふって半生干しにする、昆布で〆る、酢〆にするなど、
旨みを閉じ込めたり、味をまろやかにしたりする加工法だ。
江戸前の鮨屋は魚をそのまま出すことはなく、
美味しくするための一仕事をかならずやっている。

昆布〆は魚の味をまろやかにして、
昆布のなんともいえない香りが魚をさらに美味しく感じさせる。
通常の昆布〆は、
酢を使って魚と昆布がなじみやすくすることが多い。
私のやり方は、酢の代わりに日本酒を用いる方法だ。
昆布に日本酒を塗っておいて
魚の身をはさむという簡単な方法だが、
魚の旨みが引き出されて、しかも酒にもよく合うようになる。

酢〆は青ものの魚にとてもよい。
〆鯖は、最初は鯖の身を塩につけておき、塩抜きして酢で〆る。
生臭さが旨みに変わり、とてもよい酒肴になる。
これをさらに、焼いてみるとまた旨い。
日本酒との相性がさらに倍加されるのだ。
酢は不思議な作用があるもので、
例えば、ちょっと時間がたって
生臭みがでてきた烏賊などに塗るだけで、新鮮さが蘇ってくる。
このような技を覚えておくと大変便利だ。

日本人は刺身好きであり、魚は生が一番と思っている人が多い。
しかし、魚は火を通すことによって、
旨みがさらに出てくることが多い。
天然の車海老などは、
活きているものをそのまま刺身として食べるのも旨いが、
さっと火を通すと甘みがでてきて、本当に美味しくなる。
江戸前の鮨屋は生では握らない。
しっかりと茹でて、
いくらか冷まして人肌くらいの温度になったときに
握って提供されるのだ。
魚は生でそのまま食べることしか知らないと、
本当の美味しさを知らずに損をする。


←前回記事へ 2004年8月18日(水) 次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ