“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第14回
天然鮎の真髄

天然鮎は、やはりそのまま炭焼きにすることで
旨さがダイレクトに引き出される。
これを頭からがぶりつくのが一番美味しい。
頭のあたりの骨が若干口にひっかかるが、
なるべくばりばりと噛み砕いて食べる。
内臓まで到達すると、
濃い独特の苔の香りと苦味が
渾然一体となって口のなかに溢れてくる。
ここが天然鮎の一番の醍醐味だ。
合わせる酒はもちろん日本酒。
産地の近くの蔵元さんの地酒などとこだわってみるのも面白い。

揖保川には奥播磨を、
四万十川には高知の酒はあまり好きなのがなかったので、
香川の悦凱陣(よろこびがいじん)を合わせる。
高津川には島根の十旭日(じゅうじあさひ)、
郡上八幡は岐阜から少し離れて静岡の開運、
鬼怒川には栃木の鳳凰美田を合わせて飲む。
いずれも、ぴったりのマリアッジュであった。
そうして、盛り上がったところで鮎の骨酒。
これは、鮎を焼いて超熱燗の酒に浸したもので、
とても香ばしい香りがする。
通常は岩魚を使うことが多いが、
鮎の骨酒は岩魚とはまた違った野風味を持っている。

鮎の内臓を塩辛にして熟成させたものを「うるか」と呼ぶが、
これが珍味で最高の酒肴となる。
鮎を開いてうるかを塗った一夜干しも大変美味だ。
天然鮎の会はその後も続いている。
九州の川辺川なども加えているが、これは巨大な鮎だ。
今年は四万十川の鮎が
漁場の事情で仕入れることができなかったのが残念だった。

日本の川は、公共事業と称して
必要であるとはとても思われない河口堰、ダムなどの河川設備を
どんどん設置している。
また河川の汚染も年々悪化しており、
天然鮎にとっては住みにくい環境になってきている。
今後も、この官能的な夏の美味を永続的に食べるために、
鮎の名産地の自然がなんとか蘇ってほしいものだ。


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