“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第49回
「一茶庵」片倉康夫の弟子たち

茨城県の久慈川の上流にある
大子、水府、山方、金砂郷などの奥久慈地方は
蕎麦の名産地として知られていて、
常陸秋蕎麦という高品質の蕎麦が栽培されている。
常陸秋蕎麦をわが子のように思い、
全国に広めたのが、鉾田にある「村屋東亭」の渡辺維新さんだ。

渡辺さんは、十数年前から
当時山梨県に移転したばかりの「翁」の高橋邦弘さん
(現在は広島で「達磨」の店主)と協力して、
茨城県の農家をまわり、
手間隙かけた手作業の蕎麦栽培を奨励してきた。

で、渡辺さんは契約農家から玄蕎麦を仕入れて、
皮むき作業を行い、自家製粉している。
村屋東亭の蕎麦は渡辺さんの人柄を表すように
やさしい美味しさがある。

渡辺維新さんと高橋邦弘さんは、
「一茶庵」創始者の片倉康夫さんの直弟子だが、
片倉さんの弟子たちの店は品質が高い。
八王子「車家」の小川修さん、
秩父「こいけ」の小池重雄さん、
浅草「蕎亭大黒屋」の菅野成雄さん、
駒ヶ根高原「丸富」の宮島秀行さんなど、
いい品質の玄蕎麦を仕入れて個性豊かな蕎麦切りに仕上げる。

片倉さんはこれらの弟子たちには蕎麦打ちの手ほどきはせずに、
蕎麦に対する考え方だけを教えたという。
自ら考えさせていい蕎麦屋に育てようという配慮だ。
この弟子たちはいまでは名店の店主となっており、
さらに片倉さんの孫弟子にあたる若者が
そこからどんどん巣立っている。
高橋邦弘さんは「翁」と「達磨」の実践の場で
翁と名のつく暖簾分けの店のほかに
「鞍馬」、「ほそ川」、「三日月」、「黒澤」などの
今では評判の店となっている蕎麦屋を育てた。

片倉康雄さんの伝統を守り、
独自の工夫を加えた「一茶庵」の蕎麦の技法と心は、
弟子、孫弟子と、
さらに広く全国の蕎麦屋に受け継がれていっている。


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