“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第52回
日本の器文化は世界に誇れる

フランスではフォークとナイフで食べるスタイルは
比較的、近年に確立されたものだ。
それまではどうしていたかというと、
短剣をフォークのように食材に刺して食べたり、
手づかみで食べるという野蛮なものだった。
映画などでおなじみの三銃士の原作である
アンドレデュマの「ダルタニアン物語」にも、
そのような食事のシーンがいくつもでてくる。

現在のテーブルマナーは、
ハプスブルグ家からマリーアントワネットが嫁いできて、
宮廷料理人を百数十人も連れてきたこと、
そして、ロシア料理の
一皿ごと提供されるサービスが取り入れられて
やっと文化的な今日の食べ方ができあがったらしい。

この点、日本の箸を使う食文化の歴史は古く、高度だ。
西洋料理も中華料理も皿は机に置いたまま、
フォークや箸で口に運ぶが、
日本では器を手で持って口の近くに運ぶ。
これは大変合理的で、かつ食べての仕草が優雅で美しい。
椀などの蓋を口の近くで開ければ、
閉じ込められていた香りをまず愉しむことができる。
いい香りはその後の味わいの予想を呼び起こし、
口に含んだときに二重の美味しさが味わえる。

器のバリエーションの豊かさも
日本の伝統食文化の歴史が培ってきたものだ。
平たい皿、深い皿、どんぶり、椀、籠、猪口、盃、盆など、
材質、形状、色合い、模様などを含めると本当に多種多様である。
さらに、器というキャンバスのなかで、
盛り付けを工夫することで旬の景色を彩り、季節感を醸し出す。

和食の専門店に行かずとも、家庭でもちょっと工夫すれば、
飾りつけをして、割烹料理屋のような演出をすることができる。
専門店で使っているツマや飾りつけの道具は
築地の八百屋で素人でも入手できる。
皿に笹の葉を敷いたり、紅蓼を添えたりなど、
非日常の雰囲気は料理をさらに美味しくするものだ。


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