“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第61回
地酒業界のからくり

新潟県中越地震によって、多くの蔵が被害を受けた。
今年は例外的に、多くの強い台風群と烈震という
天変地変に日本は始終襲われて、
災害地の方々は
本当に大変な苦労と悲しみを強いられてしまった。
この場をお借りして、
被災地の方々へは心からお見舞い申し上げるとともに、
政府、地方公共団体の早急な緊急救援対策の実施と、
善意ある企業、民間の方々からの支援のもとに、
一日も早く復興することを、お祈りいたします。

さて、日本酒はまだ全国に1500蔵くらいが稼動しているが、
生産量の少ない、小さい蔵がほとんどだ。
そのなかで、知名度の低い銘柄で
美味しいものをいち早く発掘する競争が
地酒小売店の間で密かに行われている。
最近では、全国新酒鑑評会をはじめ、
色々な一般向け、あるいは小売店向けの試飲会で
各地の地酒が紹介される。
雑誌も日本酒特集を組むことは多い。
いい造りをしている蔵についての情報は
地酒小売業界では、すぐに広まる。
すなわち、幻の銘酒というのは
ほとんど存在しないといっていい。

知名度が高くなった銘柄を揃えたいのは酒屋の人情だが、
ちょっと有名になってくると
怒涛のごとく蔵元へ押し寄せる小売店もある。
良心的な小さな蔵元は
お客の顔が見える商売を望んでいるので、
わけのわからない小売店や、酒問屋には卸さないことが多い。

この客の顔が見える商売というのは、
良心的な地酒小売店でも商売の基本にしている。
地酒は個性が売り物であるので、
ただ評判がいいからといって、
誰にでも好まれるとは限らないからだ。
また、その酒の価値が本当に分かっている客に売りたいわけだ。

一方、とにかく売り上げや利益だけを考えて
商売をしている地酒小売店は、
有名銘柄やプレミアムがつけられそうな銘柄、
すなわち、客に売りやすい日本酒を多くそろえて、
誰でもいいから売れればいいという商売をしているところが多い。
また、小さい蔵でそこそこの造りをしている蔵を発掘して、
消費者の好む味の仲介を酒屋がとるというケースがある。
蔵との人間関係を大切にしながら蔵を育てる、
という健全な動機からであれば、
これは素晴らしい付き合い方と言える。
しかし、その蔵の酒を独り占めして商売しよう、
この銘柄は自分の店しかないことを売り物にしよう、
という動機で取引されることも多い。

酒屋の商売の考え方次第で、
その扱う日本酒の酒質は大きな違いがでてくる。
日本酒を買うには、小売店の姿勢をよく知り、
良心的な店で買うことが重要だ。
次号では、よい酒屋の見分け方について紹介したい。


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