“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第71回
日本海でのズワイガニの解禁

11月6日に日本海でのズワイガニが解禁された。
ズワイガニはオスだけの名称で、
地方によって、越前蟹、松葉蟹など名前が変る。
この日はたまたま能登、山陰、関西の
日本酒の蔵元取材旅行中で、城崎に宿泊した。
その前の能登での取材では、
珠洲市の宿の夕食で蟹がでて、
輪島の朝市でもズワイガニが大量に売られていたが、
これらは北海道、ロシア、カナダ、韓国産のものと思える。

城崎は外湯巡りで有名な温泉地で
志賀直哉の「城崎にて」にもでてくる。
「ゆとうや」という蟹づくしで有名な旅館に宿泊した。
でてきた蟹は、まず、蟹すき、蟹焼き。
これは、固体燃料のコンロで自分で調理する。
蟹すきは割り下が奉書を鍋状に丸く曲げた器に入っていて、
そこに蟹の足、鋏、胴を入れ、
葱、大根、人参などの野菜といっしょに煮る。
蟹焼きはほうろく鍋に蟹を入れて、蓋をして火を通し、
途中で蟹を裏返しにして、
あとはそのまま火が消えるまで蓋をしておいて余熱で蒸らす。

蟹すきは割り下の旨みが野菜にまで伝わり、
但馬の地酒によくあった。
ズワイガニは、タラバに比べれば
ダイナミックさでは負けるものの、
繊細できれいな旨みに溢れている。
割烹料理にはズワイをよく用いるのがわかる。
蟹は産地から取り寄せるよりは、
自分の口を産地に持っていくほうが遥かに旨い。

焼き蟹は野趣に溢れる旨みもでて、
また違った美味しさを愉しめた。
前菜の蟹の味噌豆腐がこれまた秀逸な味わい。
出汁の味によく溶け込んでいる。
さらに、蟹味噌そのものも別な皿にある。
日本酒ととてもよく引き合う。
蟹刺しは足の先の部分と胴の部分を
醤油につけてしゃぶりつく。
ぷりっとした食感がたまらない。
最後に打ちのめされたのは普通の茹で蟹。
とろっと茹でてあるが、旨みが全く逃げていない。
これほどの茹で蟹は初めて。
再度、そして何度でも、口を持って来たくなる味だった。


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