“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第77回
味覚の構造

利き酒能力の違いはどこから来るのだろうか。
個々人の味覚のセンサーの
能力の違いと思う人も多いだろうが、
それだけではない。
味の感度の能力よりも、
味の構造を理解することが大事である。

人間が味覚を感じる生理現象は
医学、生理学、農学、工学などの
いろいろな分野で研究が進められている。
センサーに当たる部分については
かなりのことが明らかになってきているが、
味覚を評価するメカニズムについては
まだまだ分からないことが多いらしい。

味覚は口のなか、特に舌の上に多くみられる
味蕾(みらい)と呼ばれるセンサーによって検知される。
味蕾は味細胞が60個から70個ほど集まって構成されている。
この味細胞の表面のイオン膜に
甘味、塩味、苦味、酸味を構成する成分が化学的な作用をして、
イオン膜の電位変化がおきて、
味細胞が興奮することになる。
この味覚情報は神経から大脳新皮質を経て、
扁桃体、視床下部、海馬などに伝えられる。
扁桃体で味覚情報は感情、記憶や嗅覚などの
他の情報と統合されて旨い、まづいの判断が行われる (※1)。

このプロセスで、最後に記憶と統合される部分に
利き酒とか、味見の能力を向上させる鍵がある。
すなわち、酒の味が
どのような構造になっているかという知識や経験があるほど、
味をより正確に判別できるはずだ。
酒の造りと味の関係まで把握していれば、
さらに味の評価は確かなものとなる。
では、どのようにして酒の味の構造の理解を深めるか?
それは、酒の知識を増やしながら、経験を重ねるしかない。
酒を飲むときに、なんとなく飲むのではなく、
どのような酒のスペックかを常に意識することが重要だ。
料理の味見も同様で、作る経験を持つと、味見能力も向上する。

 

※1 山野善正・山口静子編「おいしさの科学」朝倉書店1994年


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