“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第94回
門外不出の鍋、泡汁

日本人でも普通の人は滅多に口にできない鍋。
それが、泡汁だ。

なんの泡かというと、
日本酒を醸造するときの「もろみ」が作る泡だ。
最近は協会901号などの
泡なし酵母を使う蔵が増えていて、
これだと泡はあまり発生しない。
昔ながらの
6号酵母、7号酵母、9号酵母などを使った仕込みで、
もろみの発酵が進むと、
泡がタンクにあふれんばかりでてくる。
発酵がさらに進むと、この泡がまた引いてきて、
タンクの内壁にこびりつく。
そのこびりついた泡を採取して鍋の出汁に使う。

泡汁は秋鹿酒造の造りの手伝いに行き、
1週間ほど蔵人をしたときに、
谷淵杜氏が自ら作ってご馳走してくれた。
話を聞いたときには粕汁に似た味かと思っていたら、
これが全然違う。
蟹のような風味が不思議とする。
具は秋鹿酒造のある能勢の魚屋から調達した鯖だったが、
魚との相性もとてもよかった。

泡汁は、泡無し酵母を使用する蔵が増えていて、
泡あり酵母を用いたとしても、
泡がタンクの内壁にへばりつく時期は限られているから、
蔵人といえども、なかなか食べる機会がない。
それを、僅かに1週間だけ手伝いに行って食べられたのは、
とても幸運であった。
蔵を離れる前日に、
ちょうど多酸酵母で仕込んだタンクに泡がよくついていた。
それをヘラでこそぎおとして、泡を採取。
これまた初めての経験だ。

蔵人の休憩所で食べた泡汁は力強い味わいで、
食べるほどに身体が暖まり、元気になっていく気がした。
あわせたのは秋鹿の純米酒の燗。
よく合うことはもちろんだ。
おまけに、その泡の残りをお土産にもらったので、
もう一度泡汁を食べる機会ができた。
懇意の居酒屋に泡を持ち込んで
西崎ファームのバルバリー鴨を具とした泡汁をいただく。
秋鹿は酸が高く、切れのよい酒であるので、鴨によく合う。
まさに至福の泡汁であった。


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