“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第116回
日本酒、ワイン、ビールの造り方の違い

日本酒、ワイン、ビールは醸造酒だ。
しかし、同じ醸造酒でも造り方は随分違う。
何が違うかご存知だろうか?
まずは、原料はもちろん違う。
日本酒は米、ワインは葡萄、ビールは麦だ。

この原料の違いが実は、造り方の大きな違いになっている。
この三種の醸造酒のなかで
醸造過程が一番シンプルなのはワインだ。
何故かというと、原料の葡萄には糖分がある。
この糖分を酵母が食べてアルコールが発生する。これが発酵だ。
日本酒の原料の米、ビールの原料の麦には糖分は入っていない。
ご飯は甘いから糖分があると思っている方もいるかと思うが、
これは違う。
米の澱粉質を唾液のなかに含まれるアミラーゼが
分解して糖分に変化するからだ。
だから、アミラーゼの多い大根おろしをご飯にかけて食べると
甘みをとても感じる。

では、日本酒とビールは糖分をどうやってつくるかというと、
日本酒とビールで造り方がまた違う。
日本酒では麹がその役割を果たし、ビールは麦芽がそれに当たる。
日本酒では麹菌を蒸米にふりかけて、米の表面に麹をつける。
麹菌は菌糸を伸ばし蒸米のなかに入っていく。
これを破精(はぜ)るという。
このように、麹の菌糸が蒸米の中に十分破精た状態にすることを
製麹(せいぎく)と呼ぶ。

麹が米の澱粉質を糖分に変えるの過程は、その後に起こる。
麹米(こうじまい)と掛米(かけまい)と
酵母が十分育った酒母、それに水を合わせてタンクに入れると
仕込んだ醪(もろみ)状態で糖化が行われる。
この状態では麹が米の澱粉質を糖分に変え、
その糖分を酵母が食べて
アルコールに発酵させる過程が同時に起こる。
これを並行複発酵と呼ぶ。
世界の醸造酒造りでは見られない、
日本酒独自の高度な発酵方法だ。

ビールでは麦が芽を出し始める状態の麦芽が
糖化酵素を持つことを利用する。
麦芽を粉砕してお湯につけ、
糖化酵素の働きが最大になる温度にして麦の澱粉質を糖化する。
その後、酵母(イースト)を添加して発酵させる。
従って、ビールは糖化とアルコール化が直列の工程で
日本酒に比べると単純だ。

このような違いで、ワインはシンプルな葡萄の味わい、
ビールは麦芽の味、日本酒は複雑な米の味わいがする。


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