“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第115回
鴨の個性で味が違う

鴨の鉄板焼きが一段落したところで、
もう一皿バルバリー鴨がでてくる。
「ちょっと違う鴨です」というので、
炙って食べると確かに、味が違う。
種類は同じだというので、不思議な顔をしていたら、
得意顔の西崎さんが言う。
「今度の鴨は独身の男で、婚期を逃して、
 鴨社会からははずれて活きてきたやつです」と。
うーむ、どこかで聞いたセリフだと思ったら、
以前、鳴門に行ったときに、
鱸の漁師の村公一君から、
この鱸は云々と聞いた言葉と同類であった。

確かに、少しバランスが悪い。
味のきめ細かさが足りない。
それに全体的にフレッシュ感が少ないのだ。
しかし、旨いことには変りはない。

さらにでてきた鴨肉。今度は艶が違う。
惚れ惚れとする艶かさを持っていて、旨そうだ。
食べてみると確かに旨い。弾力が違う。
西崎さんはいよいよ得意げだ。
「今度の鴨は若いぴちぴちした娘なんですよ、
 先生は若い娘が好きですね、わっはっは」。
いやー、参ったの一言。

しかし、鴨の個性の違いが美味しさに影響するということまで
考えて見たことはなかった。
農場で屠殺する鴨を選ぶときにも、
表情、色艶などを見るそうだ。
また、あまり若すぎる鴨も駄目だし、
年を取りすぎても駄目ということで、奥が深い。

最後に賄い料理として西崎さんたちが常食としている
「鴨葱丼」をいただいた。
鴨と葱を酒と醤油と塩でさっと炒めて、
それをご飯にかけてあるだけ。
これが、秀逸。
それまで食べすぎでもう入らないと思っていたお腹が、
また隙間ができたようだった。
鴨の旨みと葱の辛味、
それがご飯に絡んでいくらでも食べられそうだ。

この日のおかげで体重が随分増えてしまったことは、
言うまでもない。


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