“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第121回
鱈の親子、一家総ざらいの美味

冬は真鱈の美味しい季節だ。
また、真鱈の白子も美味しくなる。
代々木上原の魚屋の経営する
居酒屋「幸」(こう)にふらっとよったら、
カウンターの先に見える黒板に「真鱈のちり鍋」、
「真鱈の白子、ポン酢和え」の字がすぐに目に付いた。

女将というか、オーナーシェフ兼サービスまで
全て一人でやっている山田りえさんに聞くと、
白子はちり鍋に使う真鱈の腹に入っていたものだという。
こうくれば、両方とも頼む展開になるのは当然のことだ。
まずは、「白影泉」の燗を注文して食欲を呼び起こし、
鍋や白子ができるのを待つ。
「白影泉」は「奥播磨」を造る
下村酒造店が提供する熟成酒ブランドで、
複雑味があり、燗にとてもよく向く。

切り干し大根の突き出しで、「白影泉」をちびりちびりとやる。
この店はカウンターが8席の小さい店で、
厨房が目の前に丸見えなので、
りえさんが酒肴の調理をしているところを
見ながら一杯やるのも楽しい。
見ていると小さい一人用の土鍋に水をはり、
昆布を入れてまずは鍋の出汁をつくり、
その間に真鱈を別な鍋で霜降りにして、土鍋の出汁に入れる。
他の具は豆腐と葱だけだ。

鍋ができるまでに「白影泉」の徳利は空きそうだったので、
次の酒を考える。
鱈にはやはり能登の酒「宗玄」の優しい旨みが合うと判断。
山田錦を使った無濾過生原酒の燗をつけてもらう。

そうしているうちに、「真鱈のちり鍋」が完成。
ポン酢と浅葱、紅葉おろし、それに醤油でいただく。
「宗玄」は思ったとおりよく合う。
真鱈のぷりっとした食感のなかに秘めている
旨みが引き出される。
真鱈の白子も湯引きされて登場。
こちらには、今朝腹から出したばかりというだけあって、
新鮮そのもの。
弾力のある張りがすごく、
噛むと旨みが口のなかに溢れてくる。
こちらは、「秋鹿」無農薬栽培自営田山田錦使用の
純米無濾過原酒「もへじ」と合わせる。

真鱈の父子は美味しく私の腹のなかに入っていった。
ここまでくると、急に残りの鱈子が食べたくなる。
しかし、真鱈の鱈子は無いという。
それなら、スケトウダラでもいいかと、鱈子茶漬けを所望。
口もお腹も十分幸せになった一夜だった。


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