“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第127回
秋鹿酒造の蔵人初日

秋鹿酒造に到着したのは、午後1時少し前で、
ちょうど蔵はお昼の休憩時間だった。
蔵人の休憩所へ常務に案内されて、
まずは谷淵杜氏に挨拶をする。
谷淵杜氏とはこれまで、何度も蔵見学で会っていて、
話もしたことがあるが、今回は別人のように見える。

「うちは、少人数でやっているで、特別扱いはできんからな」
杜氏の第一声に緊張が走る。
「もちろんです。よろしくお願いいたします」
と答えた声は少し震えていたかもしれない。
すぐに、蔵人の泊まりこんでいる部屋に案内してもらう。
秋鹿酒造は蔵の中の2階の屋根裏部屋がそれにあてられている。
6畳ほどの部屋が2部屋あり、5名の蔵人のうち、
1人は通いなので、
これまでは4名が二手に分かれてとまっていた。
そこに私が入り、3名の部屋となった。
早速荷物を置き、布団を敷いておく。
杜氏と屋さんの間で、まさに川の字だ。

秋鹿での最初の仕事は洗米処理だった。
ここは蔵人で一番若い小林君という青年が担当している。
床には半俵入る米袋が詰まれている。
米袋には秋鹿自慢の精米機で精米された酒米が詰まっていて、
それを中2階のような踊り場に上げる。

仕事は単純。
その米袋の口をあけて、
酒米を踊り場の床の穴に落とすだけだ。
その下が洗米機の受けになっている仕組みだ。
米袋の口を開けて、袋を逆さにして米を落とす。
重いので、1m四方くらいの穴に袋の口が入るまでに、
米がこぼれださないように押さえるのに結構な力がいる。
米が一度床に散らばってしまったことがあった。
このときには箒で掃いて穴に入れる。
洗米機に落とされた米はパイプの中で水と合わされて、
ネジのようなスクリューを通して洗われて、
ポンプで浸漬タンクへと送られる。
洗米といえば、手作業と思っていたので、
これは拍子抜けだった。

洗米の作業が終了して、3時になったので、30分の休憩。
休憩室に蔵人が集まりお茶とお菓子を楽しむ。
次の仕事は麹造りだった。
麹造りの責任者は代司と呼ばれる。
その代司さんと2人でコンビを組んで麹造りをするのが
秋鹿でのメインの仕事になった。

まずは、麹の仲仕事から手伝う。
これが、洗米の処理以上に力がいる。
麹米が添え仕事で一塊にまとめてあったのを、
スコップのような形状の木の櫂を使う。
麹米はかなり固くまとまっていて、
これを切り崩すには相当な力がいる。
しかも、麹室は30度以上の室温になっていてとても暑い。
上半身は裸になるが、汗だくになる。
しかし、普段は力仕事をほとんどしなくなっているので、
蔵の仕事は働いていてとても気持ちよく感じた。


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