“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第151回
純米無濾過生原酒は一時の流行か?
その1 濾過のよしあし

最近、グルメ雑誌の日本酒の紹介で
「純米無濾過生原酒」という言葉がよく見られるようになった。
これは、米と米麹と水だけを原材料とした「純米酒」であり、
貯蔵時と出荷時の二度の火入れを行わない「生酒」で、
しかも、炭素濾過などをしない「無濾過」の状態であって、
加水もしない「原酒」だ。
つまり、絞ったままの酒である。
芳醇な味わいで淡麗辛口の酒の対極をなす。

日本酒評論家、地酒の酒販店などで、
「純米無濾過生原酒」は
淡麗辛口の酒の反動のファッションであり、
すぐにまた淡麗辛口に戻ると発言をしている人も多い。
このような見方は、
純米無濾過生原酒の流行を表面だけで見ていて、
その本質を考察していないとしか思われない。

では「純米無濾過生原酒」の本質は何かというと、
絞ったままの酒をそのまま瓶に詰めた酒、
つまり、化粧をしていないスッピンの酒
というところに原点がある。
濾過を行うと、雑味、雑香を取り去ることはできるが、
同時に旨みも削ってしまう。
濾過によって淡麗さを出している酒は、
造りの悪さによって生じたまずさを緩和しているが、
よいところも少なくしてしまう。
無濾過の酒は造りの良し悪しがそのまま素直にでるわけだ。

それだから、「純米無濾過生原酒」と
ラベル表示してある日本酒がすべて旨いわけではない。
造りが悪い酒なら、
アルコール発酵が不十分なことによる嫌な味や臭いがして、
口のなかを通りにくくなる。
いわゆる「ひっかかる酒」だ。
いい造りをして始めて綺麗で旨みがある酒になる。
いい造りとは、常温熟成で述べたように、
適切な原料処理、しっかりとした麹造り、
しっかりとした酒母造りを経て、
健全に醪発酵が行われるように、手間隙かけた酒造りのことだ。

濾過の目的は雑味、雑香をとることの他に、
酒の色を透明にすること、
成分変化を少なくして酒質を安定させるということもある。
日本酒の本当の色を知らずに透明と信じている消費者は、
薄い黄色、褐色をしている酒は劣化していると考えてしまって、
購入後に文句がくることもあるという。
そのために、透明の酒でないと売れないと思っている蔵元も多い。

過度の炭素濾過は、活性炭を多く使用するので、
炭の香りもついてしまう。
いわゆる「炭香」だが、喉を通るときに邪魔する香りだ。
濾過をせずに、綺麗な旨みだけが残る
いい造りをしている蔵はまだ少ない。
いい造りをしている蔵元の銘柄を選択して
「純米無濾過生原酒」を試してみることをお勧めしたい。


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