“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第172回
ノレソレ

春はノレソレが楽しめる。
白くて半透明で平べったい穴子の稚魚。
これがあの穴子になるのかと思えるほど似ていない魚体は、
艶かしい美しさがある。
もともとは高知でよく食べられていたが、
最近は全国的に出回るようになってきた。
地引網でシラスやドロメと一緒に混ざってとれるらしい。
網にのったり、それたりするのでノレソレと呼ばれる
という説がある。

穴子の生態はまだあまり分かっておらず、
穴子がどこでどうのように産卵して、
ノレソレが生まれるのかは確認されていないという。
卵をはらんだ雌穴子も捕獲されたことはないようだ。
最近は環境の劣化とノレソレの乱獲で
穴子の絶滅が心配されているが、
ノレソレは人気がでるだけ独特の旨さがある。

まずは、つるんとした食感がたまらない。
行儀が悪いが数匹を箸で口の中にかけこんで、
唇、舌でそのぷりぷり感を楽しむのがいい。
そして味は淡白な旨みがある。
したがって、醤油につけて食べるのは味を殺してしまう。
高知では三杯酢で食べることが多いらしいが、
私は八方出汁に浮かせて、
麺類のように出汁ごとかけこむのが好きだ。
出汁の旨さがノレソレの微妙な甘みをよく引き出してくれる。

また、火を通せば旨みがさらにでてくる。
玉子とじなどで、玉子とあわせたり、
椀種にしたりすると上品な甘みが楽しめる。
まだ作ったことはないが、
種物の蕎麦として使うのもきっと旨いだろう。

そういえば、穴子とノレソレを同時に食べたことがいままでない。
鮭とイクラで親子丼を作ると旨いが、
煮穴子か穴子の白焼きと
ノレソレを並べて親子丼を作るときっと旨いに違いない。
ノレソレのような稚魚はその季節が限定されるので、
余計その味にありがたみを感じる。


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2005年4月12日(火)

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