“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第171回
山葵(わさび)の花茎は至福の酒肴

山葵はまさに日本独特の香辛野菜だ。
これだけ辛味があって、ツンと鼻にくるが、
それが引きずらない。
どんな食材でもその旨みを引き立ててくれる。
まさに、和食には無くてはならない存在だ。

山葵の栽培は、1600年頃に
静岡県の有東木で開始されたといわれている。
ある村人が山の渓流沿いで見つけてきたものを
村に持ってきて、井戸水で栽培したところ、
それがその地の風土にあっていて、とてもいい山葵に育った。
それを、他の村民も見て、こぞって栽培を始めたという。
これが、徳川家康に認められ、
また、葉の形が徳川家の家紋の葵に似ていたので、
奨励されて栽培が盛んになる。
そして、葵に葉が似ていることから
山葵と書くようになったらしい。

山葵は有東木から天城へと伝わり、
伊豆ので栽培が盛んになった。
伊豆のものは甘みもあっていいが、
長野県の穂高、豊科、安曇野あたりの山葵は、
いい水があり、夜冷える気候によって、
鋭利な辛味が最高だ。

山葵の根茎は鮫皮の卸しで摺ると、金属臭がつかない。
こちらは年中使われているが、
3月から4月にかけて、山葵の花茎がでまわる。
これは、天麩羅などでも美味しいが、
さっと熱湯で湯掻いて、
密封容器で醤油と酒で造ったタレに漬けておき、
そのまま冷めるまで待てば、いい酒肴になる。
鍋で湯掻くよりは、熱湯をかけて網にあげるのがいい。
湯掻いたあとで冷水につけるやり方もあるが、
熱いままタレに浸してそのまま密封するのが、
つんとした辛味が逃げない。

この山葵の花茎の醤油漬けは、
ちょこっと食べるだけで、日本酒がどんどんと進む。
昔は山葵の花茎は東京ではなかなか見られなかったが、
最近ではデパートの食品売り場や、
気のきいたスーパーなどにも置かれるようになってきた。

出まわる期間の短い食材ほど、
格別な美味しさを感じられる。
これは食べ手が、
残り惜しいという感情を持つためということもあるが、
はかないものに与えられた生命力の強さが
味わいにあらわれているのではないかと思う。
季節を食材で感じる。
まさに、季節の移り変わりが決め細やかな
日本に住んでいればこその楽しみだ。


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2005年4月11日(月)

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