“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第225回
日本酒復活の予感

拙書『世界一旨い日本酒』(光文社新書)の読者プレゼントは
多数の方に申し込んでいただきました。
どうもありがとうございました。

その際に、このコラムに対するコメントを
添えていただきましたが、
いずれも温かい応援の言葉が書かれていて、
今後の執筆の励みになるものでした。
また、日本酒への思い入れに賛同していただいて、
私同様に今後の日本酒の復活を望んでいる方々が
大変多いことがわかり、心強い思いをいたしました。

さて、拙書の影響力がそれほど大きくはないとしても、
今年こそ日本酒が元気を取り戻す予感がする。
それは、いい造りの日本酒が増えてきたこと、
それらの旨い日本酒を紹介する本が次々発刊されていること、
焼酎がそろそろ飽きられてきていて、
日本酒を飲む人が増えていることなどから伺い知れる。

日本酒は大陸から伝わってきた黄酒をベースとして、
千年以上の歴史をかけて日本独自の造り方を発展させ、
世界に比類のない醸造方法を確立した。
さらに、近代醸造学の進展と、
醸造設備の近代化、
流通システムの発展により、
現在の酒質は過去最高のものとなっている。
日本酒はまさに日本の歴史と文化の象徴といえる。
また、日本酒の造りの歴史とともに培われてきた、
庶民の憩いの場としての居酒屋はまさに日本の大衆文化の代表だ。

ワインは葡萄という果物が原料なので、醸造過程は単純であり、
もともと果物の持っている糖分を
酵母がアルコール発酵させるだけだ。
従って、ワインの品質は
原料である葡萄の質によるところがほとんどであるといえる。
しかも、葡萄は長く置けない、遠くに運ぶのが難しい、
ということから、栽培地の近くで醸造を行い、
その機会も年に一度だけだ。

日本酒は、再三紹介しているように、
米の持つ澱粉質を麹菌が糖化する。
その糖化したものを酵母が食べて澱粉の連鎖を切って、
アルコールへ変える。
その両方のプロセスが同時進行する
複式併発酵のプロセスにより、
日本酒の複雑味が生まれる。
米は遠距離に輸送できて、保存も長期間できるので、
原料、造り、環境という様々な条件の組み合わせで、
味わいが変化する。
同じ蔵の同じスペックの造りでも、
年に何回か仕込みを行うごとに、
個性の異なる味になることもよくある。

この日本酒の個性的な味わいは、
新酒のうちはまだ固く、バランスが悪い。
しかし、熟成によってまろやかさがでてきて、
バランスもとれてくる。
正しく作られて、正しく熟成された日本酒は、
ワインには無い、幅の広さと深みを持った味わいが出てくる。

このように、素晴しい日本酒の造りの文化、飲み方の文化は、
日本の伝統的な料理とは
絶妙の相性を見せることは言うまでもない。
鮨屋、天麩羅屋でワインや焼酎を飲んで喜んでいる客は、
人生の貴重な時間を無駄にしていることに気がついていないわけだ。
ぜひ、日本人の手で日本酒を飲む文化を取り戻してほしいものだ。


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2005年7月1日(金)

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